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「丸山先輩、ずぶ濡れになっちゃいましたね・・・」
薄いハンカチしか持ってなくて、
これじゃ、全然、役に立たない。
私の代わりにこんな事なった気がして、
申し訳ない気持ちでいっぱいなのに。
「良かった。
Aちゃんだけでも無事で。
濡れた甲斐があったわ。
そんでもちょっと濡れてもうたから。
風邪引かんとええけどなあ」
丸山先輩らしい言い方。
自分より私の心配してくれるなんて。
「このくらい、私はすぐに乾きます。
でも、丸山先輩は本当に風邪引いちゃいます。
あの、どうしますか。
今から渋谷さんのお店で練習なんですよね」
「ん、まあ。
けど、ずぶ濡れやし、
このままじゃ、行かれへんなあ」
「すいません・・・」
うちで、洋服乾かして行ってって、
言わないといけないかな。
「なんでAちゃんが謝るん？
悪いんはあの暴走自転車のおっちゃんやんか。
自転車は車道走らなあかんのに、
歩道ぶっ飛ばして来るんやもんなあ」
「そうですけど・・・」
私が迷っててすぐに車に乗らなかったから・・・
「なあ、責任感じてるんなら。
洋服買うん、付き合うてくれへん？」
「え・・・」
「決まりっと。
ではさっそく出発」
丸山先輩が明るく言って、
エンジンをかけた。
バックミラーに、
さっきより強くなった雨に打たれ続ける章ちゃんが映ってる。
あんなとこに突っ立ってて、
風邪ひいちゃうよ。
胸が痛いけど・・・
私の気持ち、
これで少しは分かるはず。
大好きだからこそ、
凄く凄く意地悪な気持ちになってる。
丸山先輩の洋服選び。
「俺、ほんまにダサいやんか。
なんでもチャレンジしてみるから、
Aちゃんの好みで、
選んでくれへん？」
なんなんだ、その自虐は。
確かに丸山先輩は独特のセンスの服を着てる気が。
「つい派手な色選んじゃいますけど。
私の好みで本当に大丈夫ですか？」
「似合うか、分からへんけど。
Aちゃんが選んでくれたんなら、
何でも嬉しいわ」
「丸山先輩に似合いそうなの、探します」
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2018年8月10日 16時
