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章ちゃんはずるい。
・・・私よりも傷付いた表情してるんだもん。
吸い込まれそうな透明な瞳。
「章ちゃんの中途半端な優しさは、
人を傷付けるの」
こんなこと、言いたいわけじゃない。
章ちゃんを傷付けたいわけじゃないのに・・・
「ごめん。
ほんまに、・・・ごめん。
許して欲しい」
うなだれた章ちゃんに、
雨が容赦なく打ち付ける。
「Aを失いたくない・・・」
私だって、章ちゃんを失いたくない。
だけど、今は・・・
そばにいるのが辛い。
見つめ合うお互いの頬が濡れてるのは、
泣いてるせいなのか、
雨のせいなのか、
分からない。
「離したくない・・・」
章ちゃんが、私に触れようして・・・
迷って雨の中をさまよった手。
さっきは抱きしめられて、
混乱したくせに、
強引に私を取り戻してくれないことに、
苛立ちを覚えてる。
「もう帰る」
章ちゃんを残して、
雨の中を駆け出したらそこに、
おっきな紺色の傘をさした丸山先輩が待ってた。
「Aちゃん・・・」
さっきのやり取り見てたんだ。
それ以上、何も言わずに、
私に傘を差しかけてくれる。
背中に水しぶきをあげて走る足音が聞こえてきた。
「Aっ、」
追いついて足を止めた章ちゃんのこと、
振り返れない私の代わりに。
「章ちゃん、焦る気持ちは分かるけど。
今は頭、冷やした方がええって。
これ以上、
Aちゃんの感情、
かき混ぜんといてあげて」
丸山先輩が静かな声でそう告げた。
「行こう、Aちゃん」
そのまま、
私の手を引いて、
歩き出す。
すぐ目の前には丸山先輩の車が停まってて。
乗るの、迷ってるうちに。
猛スピードの自転車がこっちに向かって走って来るのが見えて。
「はよ乗り」
いつもより強引な丸山先輩に、
助手席に押し込められた。
丸山先輩に外からドアを閉められたその時、
自転車が水たまりの中を、
派手に水しぶきをあげて、
通り過ぎてく。
「丸山先輩っ、」
全身、ずぶ濡れになった丸山先輩が、
窓越しに私を見て、苦笑いした。
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2018年8月10日 16時
