社長がお呼びです。６ (ページ28)

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章ちゃんが私の手を取った時、
携帯が鳴り始めた。

章ちゃんの手をほどいて、
電話を見たら、
丸山先輩からで・・・

昨日の丸山先輩の告白、本気だった。

前とは重さが違ってた。

だから私もちゃんと向き合って、
考えて返事しなきゃ。

「・・・マルから？」

章ちゃんの声が、不安そうに曇る。

「うん」

「・・・出て欲しくない」

章ちゃんが苦しそうに呟く。

「そんなわけにいかないよ」

「けど・・・
今は俺に時間、欲しい」

「ごめんなさい。
私、今日は帰るね」

電話の音がやんだ。

レモネードの５００円玉、
テーブルに置いて立ち上がる。

こんな気持ちがあやふやな時に、
いつもみたいにお金払ってもらうのは違う気がした。

お店を出たら、
さっきまで晴れてたのに、
空はどんよりしてて・・・

低い雲から今にも降り出しそう。

台風は去ったけど、
天気の急変には気をつけてって、

確か、今朝のニュースでも、
散々、言ってたような・・・

丸山先輩に、電話、掛け直さなきゃ。

「Aっ、待って！」

背中で章ちゃんの必死な声が聞こえた時、
雨がぽつぽつ当たり出して・・・

稲光が空を割った。

「ひゃっ」

怖くて、身をすくめたら、
追いついた章ちゃんに抱きすくめられた。

瞬間に、び薬の香りでもかいだみたいに、
恋心で胸がいっぱいになって。

さっきまで悩んでた事なんて何もかも流されて、
心も体も溶かされてしまいそうになる。

「やめて。
離して。
ちゃんと考えたいから。
こんなの、ずるい」

章ちゃんの胸を押して逃れる。