社長がお呼びです。６ (ページ22)

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「階下まで送って来るね」

両親に言って、
乾いた洋服に着替えた丸山先輩とマンションの一階まで。

「すいませんでした。
母が色々、失礼なこと言ってしまって・・・」

「ううん。
ご両親が心配される気持ち、分かる。
それに、俺の気持ちは、
お母さんにお伝えしとまんまやから。
Aちゃんさえ良ければ、
ずっと一番そばで守っていきたい」

丸山先輩が私の髪に触れた時、
ガラス扉の前に章ちゃんが現れた。

凄い勢いで中に駆け込んで来る。

「何やってんねん！
Aに触んなっ」

丸山先輩の肩掴んで、
力任せに引き離した。

「A、こっち来い」

私の手を取って、
自分の後ろに隠そうとした章ちゃんに、

「章ちゃんこそ。
Aちゃんに触らんといてくれる？
他の女、抱きしめてた手で」

丸山先輩が静かにそう言った。

「え・・・」

章ちゃんの身体がこわばってくの、
感じる。

やっぱり、麻美さんと抱き合ってたのは、事実。

幻なんかじゃない。

・・・繋いでた手がばらばらに離れてく。

「いつまでも麻美ちゃんのこと、
ほっとかれへんねやったら。
俺がAちゃんのこと、幸せにする。
俺はAちゃんだけやから」

愕然としてる章ちゃんから奪い返すように、

丸山先輩が、
私の肩を抱いて、
自分の方へと引き寄せた。

力、入んなくて・・・

泣くことも出来なくて、
混乱して、胸が痛いだけ。

階段の下で、
私たちの様子を見守ってたお父さんの姿を見つけて、駆け出してた。

「Aっ！誤解やねん。
話そ」

章ちゃんの声が聞こえたけど・・・

何も答えないで、
お父さんの手を掴んで、
階段、のぼってく。

「Aっ！待てって！」

章ちゃんの叫び声。

今は冷静になんてなれそうにない。

きっと、口悪しく責めたてちゃう。

・・・私の方が嫌われるんだ。