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章ちゃんが通路の奥で話してる背中が見えた。
仕事だろうから邪魔しないように、って、
思ってたのに・・・
「渋やんに、はよ言いって。
なんで俺には言うて、
旦那に内緒やねんて」
そんな声が聞こえてきて。
胸がざわざわし始める。
電話の相手は麻美さんだ・・・
どうして？
麻美さん、あの通帳もらったことで、
章ちゃんとはもう、
一切の関係はなくなるって言ってくれたのに。
「俺まで渋やんに内緒にしとかなあかんねんで」
麻美さんが何か話してるみたいで、
それから章ちゃんは黙ってる。
「まあそういうことならしゃあないな。
俺も黙っといたるわ」
私に対するのとは違う・・・
もっとぞんざいで親しげな話し方。
「じゃあな。
身体、大事にせなあかんで。
無理すんなや。
おやすみ」
章ちゃんが電話を切る気配がして、
慌てて、目の前の女子トイレに駆け込んだ。
聞けば良かったのに・・・
麻美さんと何話してたの？って。
渋谷さんに何を秘密にしてるの？
私にも教えてくれないの？
麻美さんとだけの、隠し事。
胸が押しつぶされそう。
すぐに戻れなくて、
その場で晴子にラインしちゃった。
そしたら、晴子からすぐに。
『しばらく泳がせた方がいいよ。
そしたらいつかボロ出すから』
そんな返信がきた。
前田くんみたいな、
浮気ではなと思うんだけど、
でも、
私には言えないような、
麻美さんとだけの秘密がある事が、
章ちゃんの心の中に今も、
麻美さんの居場所がある事が、
悲しい。
悲しくてたまらないの。
泳がせる、とかじゃなくて・・・
本当の事なんて知りたくない。
何にも聞かないで、
なかった事にしようって決めた。
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2018年8月10日 16時
