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「A？」
お母さんが雨の中、こっちに駆けて来た。
「どうしたの？
東京に帰ったんじゃ・・・」
「新幹線が運行休止になっちゃって。
ホテルも空いてなくて、
仕方なくここに戻ったの。
Aの部屋に泊めてもらうしかないかなって」
「そうなんだ・・・」
「それより・・・」
お母さんが、
丸山先輩の顔をうかがい見る。
丸山先輩を章ちゃんだって誤解してるみたい。
「すいません。
初めまして。
僕は・・・丸山隆平と申しまして。
Aちゃんの、
前の職場の同僚です。
今日はたまたま駅で会うて、
雨がすごいんで送って来たんです」
私が答えるより先に、
丸山先輩が爽やかに挨拶してくれた。
「そうなんですか。
私はてっきり・・・
娘がお世話になりました」
遅れてやって来たお父さんが、
複雑な顔で、私と丸山先輩を見比べてる。
丸山先輩に抱きしめられてたとこ、
見られてたんだ。
なんかもう、疲れちゃったな・・・
ずぶ濡れだし、
服乾かしてる間、
お茶でも飲んで行って、って、
丸山先輩のこと、
お母さんが部屋にあげちゃった。
狭い部屋に大人が４人。
丸山先輩、恐縮して、
おっきな身体を縮めてる。
乾燥機に洋服入れちゃったから、
お父さんの洋服着てるんだけど、
少し小さいみたいで、
余計にそう見えるのかも。
私はお茶を淹れにキッチンへ。
お母さんは丸山先輩から、
私の話を色々聞きたいみたい。
最初は台風の話してたのに、
途中から前の会社の仕事の事とか話題に、
盛り上がってる。
「Aの仕事ぶりはどうでしたか。
皆さんにご迷惑おかけしてませんでしたか？」
「Aちゃんは、
おっとりしてるようで、
案外しっかりしてはって。
デザインの面でも斬新なアイデア出してくれたり、
僕はよう助けてもろてました」
丸山先輩が褒めてくれて、
やっぱり嬉しい。
恋愛や人間関係、
ゴタゴタしてても、
仕事だけは裏切らないもんね。
頑張りたい。
「そうですか。
ならいいんですけど・・・
３人姉弟の真ん中で育ったせいか、
私ども親は平等に接しているつもりでも、
少し寂しい思いをさせていたのか、
Aは敏感なところがありまして。
だから、結婚するなら、
年上の包容力のある方が、
この子には合ってるんじゃないかなと、
思ってるんです」
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2018年8月10日 16時
