社長がお呼びです。６ (ページ19)

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どうしたらいいんだろう。

晴子の言う通り、
しばらく知らんぷりするのか、

問い詰めるのか。

それとも、章ちゃんの方から、
やっぱり麻美さんの元に戻りたいって言われちゃったら・・・

最悪の事態を想像してしまう。

住宅街の細い路地。

傘が邪魔で、
二人で隣に並んで歩くには、歩道の幅は狭くて。

私より半歩遅れて歩いてる丸山先輩が、
急に立ち止まって、
自分の傘をたたんだ。

驚いて、丸山先輩を見上げる。

「章ちゃんなら幸せにしてくれるって信じて、
一回は諦めたけど・・・
章ちゃんがあんなんなら、
俺は大切な子をほっとく事は出来へん」

「丸山先輩？」

「もうAちゃんが泣くところは、
見たくない・・・。
辛い思いも寂しい思いも、
絶対にさせへんて約束する。
やから・・・」

雨脚が強くなる。

軽自動車が角を曲がって、
こっちに走ってくる。

水しぶきが上がる、
その一瞬前に。

丸山先輩が私の腕を引いて・・・

包むように、抱きしめられた。

「俺んとこに来て欲しい。
Aちゃんがずっと笑顔になれるように、
俺、どんな努力でもするから」

柔らかい口調に、
安心して、
振りほどけない。

今だけ、こうしてて欲しい。

胸がずたずたで、
一人で立ってられなくて。

誰かの温もりに包まれて、
甘えていたい。

「ごめん、なさい。
今は、何も考えられなくて。
私・・・」

「ごめん。
こんな時につけこむような真似して。
男らしくないよな。
さっきのことは誤解かもしれへんのに」

丸山先輩が呟いた時に、
タクシーが一台、曲がって来た。

私たちの前を通り過ぎて、
住んでるマンションの前で停まる。

降りて来たのは、
東京に帰ったはずの、
お父さんとお母さんだった。