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神山くんにつられるように、
工藤さんも愛理ちゃんも、
急にはっとして、


「お疲れ様でした」


「また明日会社で」


口々に言ってくれたけど・・・


真琴先輩だけは、
私を睨みつけてる。


目がさめる様な赤い口紅を施した唇が、
悔しそうに歪んだ。


真琴先輩のこと、怖い、って初めて思った。


章ちゃんのこと、
そんなに本気なようには見えなかったのに・・・

違ったのかな。


「じゃあ、みんな、楽しんでって。
女の子たち、ちゃんと家まで送ったってや」


章ちゃん、
最後にそう言って、
先を歩き出した。


怒ってるのか、
手もつないでくれない。


金魚のビニール袋、
手首にかけてるし、
巾着や泊まりの用意のかごバックもあって、
両手一杯で歩きにくい。


それに気付いて、


「貸してみ?」


って。


かごバッグと巾着を持ってくれたけど、
いつもみたいなふわぁって柔らかい話し方じゃなくて。


やっぱり、どう見ても怒ってる。


みんなに、
私が彼女だって言ってくれて嬉しかったけど、

不機嫌なのは、嫌。


せっかくのお祭りなのに。


それに、もうすぐ花火始まるのに、
人の波をくぐり抜けて、
別な方向に歩いてくから。


花火、見ないいで帰っちゃうの?


約束したのに・・・



急に立ち止まった私を、
少しいらだった顔で、
章ちゃんが振り返る。


「なんで急に止まるねん。
人混みやのに危ないやろ。
こっち来い」


怖い顔のまんまで言って、
私の手首掴んで、
人のまばらな方へとぐいって引き寄せた。


そんな乱暴にしなくていいのに。

泣きたくなる。


章ちゃんの手を振り払って。


「どこ行くの?
もう帰るの?
花火、一緒に見てくれないの?」


見上げて聞いたら、
私のこと見てくれなくて。

少し、視線をそらした。


何にも言ってくれないし、
もうやだ。


せっかくお祭りに来て、
やっと二人きりになれたのに、
ケンカなんかしたくない。

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作者名:fool x他1人 | 作成日時:2018年7月18日 11時

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