喜多川法律事務所は今日もにぎやかです［ＡＲＳ］ (ページ20)

今日:20 hit、昨日:0 hit、合計:102,095 hit

おさらいしよう。ページ20

＿

Aｓｉｄｅ

「わかっているのはこれだけか。」

接見を終えて、事務所に戻って。

和君がまとめてくれたホワイトボードと睨めっこしながら呟く。

「起訴前だしねぇ。
　まぁ、起訴後だったとしても、
　検察は請求しなきゃ最低限の
　証拠しか出してこないんだけどさ。
　刑事事件は、
　弁護士が圧倒的に不利なのだよ。
　向こうは何十人、何百人っていう
　人間で捜査して、証拠を集める。
　それに対して俺たちは
　この人数でそれと戦わないと
　いけないんだからねぇ～。」

いつの間に起きていたのか。

智君が達観した口ぶりでそう答えた。

「事件をおさらいしますよ。」

和君がホワイトボードの前に立ち、みんなに向かって話し始めた。

「ｍａｘＶの塙社長は、
　自宅で就寝中に刺殺されました。
　赤木さん逮捕の決め手になった
　重要な証拠は２つ。
　事務所で発見された
　凶器から出た、赤木さんの指紋。
　それと公開された防犯カメラの映像に
　映っていた帽子とジャンパーが
　赤木さんの物であると判断された事です。」

「で、これが
　公開された防犯カメラの映像。」

潤君がパソコンを操作し、モニターに防犯カメラの映像を流した。

事件当日の時刻表示と共に映る、緑色のジャンパーと帽子を被った男が塙家の門を乗り越えて侵入し、モニターに顔が映らないよう、後ろ向きで歩いていく姿が映っていた。

「で、犯行後も。」

６分後に同じ格好の男が再度門を乗り越え出ていく姿。

「公開されたのはこれだけ？」

私が聞くと、

「あと２つあるよ。」

と潤君が家の脇をすり抜けていく男の映像を２つ流した。

両方とも後ろ姿だった。

「う～ん・・・。
　やっぱ引っかかるんだよなぁ～。」

そう言って席を立ちあがった翔君。

「どこに行くの」

「ちょっと現場に。真実っていうのは
　百人いたら百通りあるけど、
　起こった事実は１つしかないから。」

そう言ってブースを後にする翔君。

「俺も行きます！！」

潤君も席を立ち、翔君を追っていった。

＿