第百八十話 ページ31
一瞬と気が止まったような感覚がして、また流れだす。
目の前の千佳は相変わらず微笑みを浮かべたままで、だからこそ彼女が放った言葉を理解するのに時間がかかった。
「……とりあえず、奢っていい?」
「わーい! まずフランクフルトと焼きそば〜!」
まずってことはまだまだたくさん奢らせるつもりか。
お財布の心配をしながら露店まで向かい、フランクフルトと焼きそばを二つずつ買って千佳のもとへ戻った。
そして通行の邪魔にならないところで、並んで食べる。
「……それで、知ってるっていうのは、つまり、私と、先生の……」
「二人の関係でしょ? 奏音のことだから、まだ付き合ってないでしょ。でも付き合う一歩手前、みたいなところ」
「……」
あまりの的確さに、私は言葉を失う。
昔から千佳は変なところに疎く変なところで鋭かった。だけどまさか、こんな探偵みたいに的確に当てることができるだなんて。それとも、そんなに私はわかりやすかっただろうか。
「……怒って、る?」
「へ、なんで?」
フランクフルトを大口で頬張りながら、千佳は首をかしげる。
口の端にケチャップがついてしまっていたので、私はそれをティッシュで拭いてあげながら、質問を続ける。
「……千佳、先生のこと、好き……だったでしょ?」
「え、別に?」
きょと、と首をかしげながら千佳は否定を返した。
それでは納得がいかない私は、言葉を探す。本当は、千佳が先生と親し気にするたびに心の中で罪悪感を感じていた。
私は、ひそかに親友である千佳を裏切っているのではないかと。
「だって、千佳、先生のこと格好いいとか……」
「私、もう彼氏いるよ?」
「え、嘘、誰!?」
「某バスケ漫画の2m超えの紫色の人っ」
語尾に音符でもつきそうな軽い口調で、千佳は答える。見るものの毒気を抜いてしまいそうな、明るい笑顔で。
いつの間にか千佳はフランクフルトを食べ終わっていて、もう焼きそばに取り掛かっている。私のフランクフルトは、まだ二口かじった程度だ。
「私浮気はしない主義なの。先生は好きだけど、しいて言うならジャ〇ーズが好きと同じ感覚かな。それも、彼が嫌って言われたらすぐに先生推すのやめれるしね!」
私は彼一筋なので!と胸をどんと叩く千佳。
あぁ、身構えていたものが全部抜けていく感覚がする。
「……そういうもん?」
「そういうもん。だから、応援してるからね」
「……ありがと。ところでいつ気づいたの?」
「最初から。奏音わかりやすいもん」
「へ」
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ステラさん» うわー嬉しいです!幸せだと言ってもらえることこそが幸せです!本当に励みになります!本当にありがとうございます!! (2022年2月5日 23時) (レス) id: 5d704cea99 (このIDを非表示/違反報告)
ステラ - 面白すぎて最近読み始めたのにもうここまできちゃいました!!!めちゃくちゃドキドキしてます!!素敵なものが読めて幸せです! (2022年2月2日 23時) (レス) id: 3475edfef8 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 彩華さん» ツボ!!!!!うれしい!!!!!!更新遅くて本当に申し訳ございません。励みになります。頑張って更新します〜!! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - Amamiyaさん» ありがとうございます!亀更新にもほどがありますが、完結させず放置することは絶対ございませんので、たまに覗きにきてやってください…!応援、励みになります! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - やばい。ツボすぎます!一気読みしちゃいました!更新頑張ってください! (2021年4月1日 22時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年5月19日 17時