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第百七十五話 ページ26

「せんっ、先生!? ちょ、止まっ……先生!」

ギリ、と握られた手首を引っ張られ、早足で歩いていく。コンパスの差のせいで引きずられる形になってる私は、転ばないよう駆け足になる。さっきから幾度となくバランスを崩しかけてるが、そのたびに腕を強く引っ張られ立たされ、そしてまた歩かされる。
一度も先生が私を振り返ることはなかったけど、それでも見てる後ろ姿からひしひしと怒りが伝わってきた。

ようやく先生が立ち止まった先は、ロビーの奥にある空き室だった。普段は会議室のような用途で使われてるのだろうか、引き戸を力強く開け、私を引っ張り中に入れる。そして後ろ手で引き戸を閉めて、鍵をかけた。
唯一の光源だった廊下の明かりが消えて、部屋の中に暗闇が訪れる。明かりをつけようと伸ばした手を、先生が思い切り掴んだ。

「わっ……!」

視界が大きく揺れて、気づけば壁に押し付けられていた。背中でひやりと冷たい壁を感じ、思わず身震いする。右手は先生に掴まれたまま、頭上で固定されている。
窓や廊下から漏れるわずかな明かりで、少しずつ目が慣れてきた。
目の前にある先生の灰色が、暗い。

「……せんせ、い……?」
「なんで、アイツと連絡取ってんの」
「へ……?」
「……なんで」

あいつ、って会長のこと……?

「け、今朝、向こうから……メッセージが来て、」
「なぁ、覚えてんのか」
「へ……ひゃっ!?」

そう言うなり、先生は私の左手も右手と同じように拘束し、そして私の首に自分の顔をうずめた。息が肌にぶつかった途端、ぶわりと広がるくすぐったさとは違った何か。
ぞく、と鳥肌が立ち、そしてあまりに近すぎる距離に体中に熱が走る。

「前もこんなことあったのに、なんで懲りずに話してんの? なぁ、お前そんなに俺を怒らせたいの?」
「っふ……ゃ、せんせっ、くすぐった……!」

全神経が首元に集まる。そこに先生の唇が当たってるって、思い知らせるように。

「せん、せい、……怖い、よ」
「……お前が卒業するまで待ってるだけで、お前はもう俺のもんだろうが」
「……え、」

今、先生なんて、
なんて考えてたら、先生が少しだけ顔をあげて私を見た。
暗い色の、それでも美しい瞳が私をとらえる。

「なぁ、」

あげた顔をまた首元に戻して、先生は私の首に

「やっ!?」

――噛みついた。
電流みたいにぞくぞくと体が震えて、腰が抜けそうになる。思わず目の前にあった体に擦り寄った。

「……可愛いな」

頭が、茹る。

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設定タグ:ツンデレ , ドS , オリジナル   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ステラさん» うわー嬉しいです!幸せだと言ってもらえることこそが幸せです!本当に励みになります!本当にありがとうございます!! (2022年2月5日 23時) (レス) id: 5d704cea99 (このIDを非表示/違反報告)
ステラ - 面白すぎて最近読み始めたのにもうここまできちゃいました!!!めちゃくちゃドキドキしてます!!素敵なものが読めて幸せです! (2022年2月2日 23時) (レス) id: 3475edfef8 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 彩華さん» ツボ!!!!!うれしい!!!!!!更新遅くて本当に申し訳ございません。励みになります。頑張って更新します〜!! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - Amamiyaさん» ありがとうございます!亀更新にもほどがありますが、完結させず放置することは絶対ございませんので、たまに覗きにきてやってください…!応援、励みになります! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - やばい。ツボすぎます!一気読みしちゃいました!更新頑張ってください! (2021年4月1日 22時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年5月19日 17時

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