【4】サド教師とツンデレ生徒【名前変換オリジナル】

第百六十五話 ページ16

千佳と和樹君と別れを告げて、私は踵を返し学校に向かう。道中部活帰りの生徒たちとすれ違ったが、思ったより学校に戻る私に対して不思議そうな顔をされることはなかった。
何人かクラスメイト達や知り合いに会い、手を振り、そのまま歩を進める。歩くたびにガサガサと揺れるスーパーの袋が、今から向かう学校とどこかミスマッチだ。
足は自然と、通いなれた指導室へ。

「先生」
「ん」

おそらくミーティングの議事録を確認してるのだろうか、パソコンを見ていた。

「……眼鏡かけてる」
「ん？ あぁ、パソコン見てるからな」

はぁ、と憂鬱そうにため息をつく先生は、眼鏡をはずした。
そこまで度はないのだろう、薄いレンズの眼鏡だった。

「……つけてるとちょっと格好いい」
「あ？ 普段から格好いいだろうが」
「見慣れたらそんなでもないかも」
「おっま、ちょっとこっち来い」

ガタリと席を立つ先生から逃げるように、私は笑いながら部屋の反対側まで駆けて行った。
だって生き物って慣れるんですよ。イケメンだって毎日見てたら慣れる。

「はい、先生これお菓子」

机の空いていたスペースに、がさりと持っていた袋を置く。
「あぁ」と短く返事を返した先生は、それを目にしてぎょっと目を見開いた。

「……俺の三食をお菓子で埋める気か？」
「選び始めたら止まらなくて。と〇がりコーンを指にはめる先生が見てみたいって満場一致で」
「教師で遊ぶな」
「生徒をパシらないでください」
「……言うようになったじゃねぇか」
「先生の教育の賜物です」

悔しそうに笑う先生に、私は面白くてくすくすと笑いながら返す。
中途半端に立ったままの先生は、腰に手を当て大きく反らしながら「んー」と背伸びをする。そのまま扉へ向かい、ガチャリと鍵を閉め、ブラインドをつけた。

「……？」

首をかしげる私を置いて、先生はぎしりと先ほどの椅子にまた腰かける。
そして私のほうを見る。物言いたげな彼の瞳に、どきりと胸が高鳴った。

「邦月、おいで」
「っ、」

甘ったるい声に、顔にかっと熱が走る。
だけど考えるより先に、有無を言わせない先生の声に従い、私は彼のもとへ歩み寄る。
無防備な私の腰に腕を回し、先生は私を抱きしめお腹に顔をうずめる。

「えっ、せ、せんせい！？」
「あーつっかれたぁ。修学旅行前にスケジュール詰めすぎだっての」

ぐりぐりと先生は顔を私の腹部に押し付けてくる。それが少し苦しくて、主にくすぐったくて、そしてとても恥ずかしい。

第百六十六話→←第百六十四話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す