第百四十九話 ページ50
「あぁそうか、君はしばらくあちらの世界にいたから記憶が混濁しているんだ。だがじきに思い出す。とりあえずあの方のもとへ行こう」
「あの方って誰なの？」
「もちろんあの方、ハートの女王さ」
そういわれても心当たりがあるはずがない。
訝しげな表情をぬぐえないまま、私は歩こうとする。と、その時、草むらから二人の人影が飛び出してきた。
「いけないよ、アリス」
「だめだ、アリス」
トゥイードルダムとトゥイードルディー役の樹と和樹くんだ。
にやにやと仲良く肩を並べ立つ二人は、交互にステレオのようにセリフを続ける。
「ハートの女王は君を処刑するつもりさ」
「ハートの女王は君に対し怒っている」
「な、何……？」
「余計なことを言うな、双子！ あのお方に逆らうつもりか！」
憤った白ウサギに対し、双子はお互い顔を合わせて仕方ないよね、といった風に肩をすくめる。
そして同時に私のほうを振り向きにやりと笑った。
「このまま死にたい？」
「それとも生き延びたい？」
「選んでアリス」
「僕らの手を取るか、偽りのウサギの手を握るか」
二人は私に向かって手を差し伸べる。
「そんなの、わからないわよ……！」
苛立たし気に私はつぶやく。両手を前に伸ばし、二人の手を握りながら。
「死にたくないだけなんだからね！」
にやりと笑う二人に引っ張られ、私はともに舞台袖まで走り出した。
後ろで白ウサギが私の名を呼ぶが、やがて諦めたかのように白ウサギも踵を返し走りだす。
一端ステージが暗くなってからすぐ明るくなり、私は二人に手を引かれたまま再びステージ上に登場した。
「……おや、これは珍しい。かわいらしいお客さんだ」
そう私の声をかけてきたのは、緑色の衣装に身を包んだ芋虫役のクラスメイト。
水パイプの中から、ドライアイスの煙がぷかぷかと浮いている。気だるげなその姿は存外様になっていて、役になり切っている感が否めない。
「……あなたはだぁれ」
「君が知っているはずの誰かさ、アリス」
「ここはどこ」
「君の知っている世界だ」
ふぅ、と口から煙を彼は吐く。
いつの間にか双子は私の後ろからいなくなっていた。
「私は知らないわ、こんな世界」
「あぁ、だろうね。だけど君が望んだ世界でもあるんだ」
「なんていうことなの？ 私はこんな世界望んだ覚えはないわ」
「あぁだがかわいいアリス。この世界は君の、君だけのために作られたものなんだよ」
あぁ、そろそろあの人の出番だ。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます！これからもバンバン頑張ります！一気に読んでくださってうれしい…これからも何卒よろしくお願いいたします！！ (2019年5月11日 19時) (
レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - このお話大好きです！一気に読んだんですけどすっごい楽しいです！これからも頑張ってください！ (2019年4月4日 2時) (レス) id: b4edfa4067 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あだ名がンゴって…さん» うわー！ありがとうございます！そういっていただけただけですごくうれしいです。コメント励みになります。これからも頑張らせていただきます！ (2019年4月1日 21時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
あだ名がンゴって… - 初コメ失礼します。あなたの文才、ください（切実）めっっっっちゃ好きですもうなんなんですか大好きです。更新頑張ってください！！！ (2019年3月31日 11時) (レス) id: d0cbd630d9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - セツナさん» うっありがとうございます（泣）尊敬に値するようにもっと文才磨きます！ゆっくり亀さんに呪われていますが頑張って更新させていただきます！ (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月25日 13時
