第百四十七話 ページ48
心配してきた千佳にできるだけ笑顔で返す。ちゃんとひきつっていないだろうか。
少しだけ心配になって私は頬をさっき先生にやられたようにむにむにとつぶしてみた。
「姉御そろそろ出番だ！」
「はーい！」
はっとはじかれたように私は前方を見る。
全員の視線が私に集まっていて、何か私が言うのを待っているようだった。
「えーっと」
心細そうに挙げられた拳は、たぶん誰の心にも響かないだろう。
「が、頑張ろ、う……？」
苦笑が広がり、明らかに失敗したのだとわかる。
あぁでもどうしよう。こんな雰囲気でみんなを外に出したくないな。
なんて言えばいいだろう。あと少しで外に出なければいけないのに。ざわざわとカーテン越しに聞こえる観客の声で視界が邪魔される。
「え、っと」
「お前らあんなに練習したんだ。セリフ忘れたところでアドリブできるだろ」
私の声を遮るように、先生がしゃべりだす。
全員の視線が今度は彼の顔に集中した。
「俺は今日はスワヒリ語でしゃべる気分だから、そこんとこよろしくな」
にっ、と笑う彼。
そんなふざけた発言に、クラスのみんなは一気に笑いに包まれる。
スワヒリ語って、そんな言語まで知っているのか。
私もこらえきれず口元を抑えて笑い出す。
あぁやっぱりずるいな。
「邦月」
「はい？」
先生に名を呼ばれ、笑いながら振り返る。
すると彼はその端正な顔を私の耳元に極限まで近づけた。吐息がかかりそうなほど近いその距離に、理解するより先に顔にかっと朱が走る。
「 」
囁かれた彼の言葉に、私は息をのむ。内容に対してなのか、その距離に対してなのかは、たぶん明日ゆっくり考えることだろう。
先生に返事ができる前に、準備に入る合図を進行役の人が出してくれた。
あわてて私は幕の下りた舞台に立つ。足首までのロングドレスなので動きにくいが細心の注意を払えば、走れないこともない。
全員が配置に着いたところで、ビーッという劈くような音とともに幕が上がり始めた。
「昔々、あるところにアリスという名のそれはそれはかわいらしい女の子がいました」
千佳の声がマイクを通して体育館全体に響き渡る。
「アリスは本ばかり読む姉の付き添いをすることに飽き飽き。何か面白いことはないかと日々模索していたのです」
「あぁ、面白いことはないかしら？ 姉様、どうしていつも本ばかりを読んでいるの？ つまらないわ、遊んで！」
だが姉役のクラスメイトは本を読んだまま私を無視する。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます！これからもバンバン頑張ります！一気に読んでくださってうれしい…これからも何卒よろしくお願いいたします！！ (2019年5月11日 19時) (
レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - このお話大好きです！一気に読んだんですけどすっごい楽しいです！これからも頑張ってください！ (2019年4月4日 2時) (レス) id: b4edfa4067 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あだ名がンゴって…さん» うわー！ありがとうございます！そういっていただけただけですごくうれしいです。コメント励みになります。これからも頑張らせていただきます！ (2019年4月1日 21時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
あだ名がンゴって… - 初コメ失礼します。あなたの文才、ください（切実）めっっっっちゃ好きですもうなんなんですか大好きです。更新頑張ってください！！！ (2019年3月31日 11時) (レス) id: d0cbd630d9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - セツナさん» うっありがとうございます（泣）尊敬に値するようにもっと文才磨きます！ゆっくり亀さんに呪われていますが頑張って更新させていただきます！ (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月25日 13時
