第百四十一話 ページ42
結局英語部の出し物は地味なためナシになった。何より、英語部が全員同じクラスの生徒なのでクラスの出し物に集中したほうが効率いいのでは?という話にまとまったのだ。
バタバタしているうちに、いつの間に文化祭は目前になっていた。
授業中も私たちが作った小物を教室に放置したままになっているので、生徒たちは否が応でもそわそわしてしまい授業にならない。もとより、文化祭準備のためほとんどの授業は自習か課題をやるだけのものとなっていて、時間の大半が準備に回されてしまっているし。
「なんていうことなの? 私はこんな世界望んだ覚えはないわ」
「あぁだがかわいいアリス。この世界は君の、君だけのために作られたものなんだよ」
緑色の衣装に身を包んだ芋虫役のクラスメイトは、だるそうに椅子に腰かけたまま小道具である水パイプを吸った。
私は困ったように頭を振って、改めてクラスメイトを見やる。
「白うさぎはどこ? この世界に私を連れてきたのは彼だわ、彼なら私をもとの世界に戻してくれるかも」
「白うさぎは女王様のところさ」
「あぁでもこの時間は帽子屋さんのところかな?」
「この時間ってどの時間? 彼の時計はいつも三時で止まってる」
「そうさいつだってお茶会ができるんだから!」
私の背後から現れたトゥイードルダムとトゥイードルディーの役を担っている、デニムのオーバーオールをおそろいで着た和樹くんと樹。二人は交互にセリフを口にしながら私の周りでぐるぐる回り始めた。
「困惑させないで、白うさぎの居場所は知ってるんでしょう? どこにいるの、お願い教えて」
「それより僕と遊ぼうよ」
「いいや僕と遊ぼう」
「「じゃあ三人で遊ぼう」」
私の手をとって、二人はぐいぐいと引っ張る。前のめりになった私は、転びそうになりながらも前に進む。
芋虫役の男子はゆったりと手を振って、私にさよならを伝えた。
「ちょっと、私をどこに連れていくつもりなの?」
「遊べるところさ」
「休めるところだよ」
矛盾したセリフを吐きながら、二人はぐいぐいと私を引っ張る。
向かう先には、先生が立っていた。
「Guten Tag! お茶会日和だ」
「……あなたは」
「帽子屋さんさ」
「狂ったハッター!」
「君こそアリスだね。さぁおいで、主役がそろったところでお茶会を始めよう」
「お茶会って、今は何時なの?」
「三時さ」
「三時だよ」
「三時なんだ」
「カーット!」
鋭い千佳の声で、全員の動きが一瞬止まる。
ため息が私の口から逃げた。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます!これからもバンバン頑張ります!一気に読んでくださってうれしい…これからも何卒よろしくお願いいたします!! (2019年5月11日 19時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - このお話大好きです!一気に読んだんですけどすっごい楽しいです!これからも頑張ってください! (2019年4月4日 2時) (レス) id: b4edfa4067 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あだ名がンゴって…さん» うわー!ありがとうございます!そういっていただけただけですごくうれしいです。コメント励みになります。これからも頑張らせていただきます! (2019年4月1日 21時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
あだ名がンゴって… - 初コメ失礼します。あなたの文才、ください(切実)めっっっっちゃ好きですもうなんなんですか大好きです。更新頑張ってください!!! (2019年3月31日 11時) (レス) id: d0cbd630d9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - セツナさん» うっありがとうございます(泣)尊敬に値するようにもっと文才磨きます!ゆっくり亀さんに呪われていますが頑張って更新させていただきます! (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年6月25日 13時