第百三話 ページ4
そういうと母はちらりと私のほうを見た。そんな彼女の視線から逃れるように私はそっぽを向く。
お説教が始まる予感がしたのだ。
「昔っから言い出したら聞かない子で、頑固というか……猪突猛進みたいな性格なんですよねぇ、困ったわぁ」
その予感は当たっていた。
一気に頬に朱が走り、私は母親に噛みつく。
「ちょっとお母さん！」
「今回は入院までしたんだからお母さん言わせてもらいますよ」
「じゃあせめてみんなが帰った後にしてよもー！」
あまり動けないくせにがばりと布団を捲って顔を隠すように埋もれる。恥ずかしいったらしょうがない。こんな公開処刑みたいなことしなくたっていいのに！
気づけば千佳はくすくすと笑っていて、残りの男性陣はみんなまるで豆鉄砲を食ったようを食らったような顔をしていた。
「……姉御ってお母さんには弱いタイプ……？」
「正直こんなに取り乱す委員長初めて見たかも……」
「ようやく年相応に見えてきやがった」
「一同で納得しないでください！！」
千佳はよく家に遊びに来ていたからお母さんとは昔からの知り合いだけど、樹はただ幼いころからクラスメートってだけで家に遊びに来るほど親しくなかったから私の母親と面識はない。
ただでさえ多忙であまり家にもいないし、三者面談や授業参観も自分の授業をサボって兄が来てくれていたわけだし。こう考えると、暁って私にも結構シスコンなんだなぁってほっこりした。
「でも私もうそろそろ行かなくっちゃ、文句を言ってきた上司に思い切り罵声を浴びてきちゃったのよ」
「……アグレッシブ……」
「しょうがないでしょ、入院したってしか聞いてなかったんだから……」
「ごめんなさいって……次はいつ帰るの？」
「うーん……来月末に少し休みを取れるかもしれないわね、取れ次第連絡するわ」
「はーい」
ひらりと指先を躍らせるように手を振った母親はヒールを鳴らしながらドアのほうへと戻っていった。
その皺ひとつない赤いスーツを着た母親の後ろ姿に、私は声を投げる。
「お母さん！」
「うん？」
ぴたり、と立ち止まり振り返る母。
「お仕事、頑張ってね」
「……」
ふ、と母が薄く息を漏らしたのが聞こえた気がした。
そしてにっこりと歯を見せて笑って親指を立てた。
「任せなさい！」
それだけをいうと、お母さんはそのまま扉の向こうへと姿を消した。
部屋の中に母のつけた名前の知らない花の香りの香水がまだ残っていて、久しぶりだなぁと思わず顔を綻ばせる私がいた。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます！これからもバンバン頑張ります！一気に読んでくださってうれしい…これからも何卒よろしくお願いいたします！！ (2019年5月11日 19時) (
レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - このお話大好きです！一気に読んだんですけどすっごい楽しいです！これからも頑張ってください！ (2019年4月4日 2時) (レス) id: b4edfa4067 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あだ名がンゴって…さん» うわー！ありがとうございます！そういっていただけただけですごくうれしいです。コメント励みになります。これからも頑張らせていただきます！ (2019年4月1日 21時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
あだ名がンゴって… - 初コメ失礼します。あなたの文才、ください（切実）めっっっっちゃ好きですもうなんなんですか大好きです。更新頑張ってください！！！ (2019年3月31日 11時) (レス) id: d0cbd630d9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - セツナさん» うっありがとうございます（泣）尊敬に値するようにもっと文才磨きます！ゆっくり亀さんに呪われていますが頑張って更新させていただきます！ (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月25日 13時
