【3】サド教師とツンデレ生徒【名前変換オリジナル】

第百二十二話 ページ23

「やった……！」

ちいさな歓喜の声をあげて喜ぶも束の間。足に衝撃を感じて見てみれば、転がるボールが視界に映った。
油断してしまった、と喜びも霧散してしまう。

ため息をついてトボトボと外野へ歩いていると、先生がいつものあの口端歪めた笑いをしているのに気がついた。

「油断したな」
「……油断しました」
「ま、一人にでも当てられたんなら上出来じゃねーの？」
「千佳のボールあってこそなんですけどね」
「千崎って実はスポーツ得意なんだな」
「私もびっくりしました……」

コートの方を振り返れば、千佳は相変わらず豪速球を繰り出している。
樹と和樹くんは声を張り上げてそんな千佳を応援していて、私も口元に手を添えて応援の声を投げた。

「頑張れ、千佳ー！」

千佳が持っていたボールがすごいスピードで私に当てた男子生徒にぶつかった。
強すぎる。

だけど結局そんな千佳も二人掛かりで狙われてボールをぶつけられ、目立った前衛もいなくなってしまった私のクラスの衰退は秒数えだった。
結局一回戦敗退で終わってしまった。しょうがないな、と諦めもつく。
点差は相変わらず三年生が一位、二年生、一年生となっている。経験が違うんだよ、とニヤニヤしている三年生が目に浮かんでは消える。

「ま、俺に任せてろ」

そんな声に後ろを振り返る前に、頭上に重みを感じて髪の毛をくしゃりと乱された。
見上げる形で先生をみれば、私を見ていない瞳は細められて、空いた左手でしゅるりとそのネクタイを解いた。

どきり、と胸が高鳴る感覚がした。
瞬時に赤くなる頰を隠すようにうつむけば、気にしていなさそうな先生は私の頭を解放して去っていく。

「奏音！ 聞いた！？ シメは教師対抗のバスケで、笹塚先生でるんだって！」
「へ」

慌てて体育館中央をみれば、おそらく参加する先生たちが揃ってコート内に立っていた。
ネクタイを外し胸元を開け、袖を肘の上あたりまでまくしあげた先生が前髪を後ろに流す。それだけで体育館は黄色い悲鳴で溢れた。
惜しげも無く色気を出しやがって。

「このままここにいよ！ 特等席で観れる！」
「う、うん……」

正直私も気になるので、千佳の提案に乗る。二人でコートの外側、邪魔にならないエリアに腰を下ろせば樹たちも私たちにの背後に腰を下ろした。

「先生ってバスケできるんだ……」
「スポーツ全般得意って言ってた！」
「なにそれ樹みたい……」

仲よさげにほかの先生と話している笹塚先生に、つい期待を抱いた。

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