第百二話 ページ3
「奏音!!」
「ひぇっあっうぇっ、お母さん!」
あまりの驚きに変な悲鳴が出た。喉もひきつった。
基本安静にするべきな病院の扉をバターンだなんて大音量で開き悲鳴のように自分の名前を呼ばれたら、それは誰でも変な悲鳴を上げてしまうのではないだろうか。
久方ぶりに見る母は、懐かしさはあるけれども塵とも変わっておらず、相変わらずビジネスウーマン、バリキャリといった感じだった。赤いスーツをぴっちりと着こなし、大人の女性といった雰囲気を惜しまず前衛的に出している。
「……久しぶり……」
「もー! 連絡受けてびっくりしたわよ、奏音が入院だなんて!」
「……お手数をおかけします……全治三か月です……」
「足が酷いんだって?」
そう母に問われて、私はちらりと一番重症の足のほうへと視線を向ける。
包帯でぐるぐる巻きにされて、動かせぬよう負担をかけぬよう固定されている。大袈裟な気もするんだが、骨すらも見えてしまうほどの重症だから何とも言えない。
「もー……嫁入り前の女の子なのに! 顔も怪我して!」
「ごめんなさぁい……」
そこでようやく周りの人へと視線を向けるつもりになったのか、母は呆然としている私の友人や教師に気づいた。
そして短く切られてカールがかっている髪の毛を耳にかけて、行儀よく頭を下げた。
「まぁまぁ、いつもお世話になっております邦月 奏音の母ですー」
「奏音ママ、久しぶり!」
「千佳ちゃん久しぶりー」
「はっ、初めまして、クラスメイトで……」
「あぁ、聞いてるわよ、えーっとどっちか樹くんでどっちが和樹くん?」
「俺が樹で、こっちが和樹です」
まずは自分を指さし、次に隣に立っていた和樹くんを指さす樹。それを見て、母はもう一度二人の名をしっかり目を見て呼びなおすと、にっこりと笑った。
「うん、覚えた」
「初めまして、邦月さんの担任をやらせてもらっております笹塚 拓虎と申します。この度は私の監督不行き届きでこのような結果になってしまい、何と申し上げたらいいか……」
「あ、あら、あなたが担任の」
ひえぇ、先生が私のことをさん付けで呼んでる……と寒気を覚えたのもつかの間、よくよく考えれば私の軽率な行動の責任を取らなきゃいけないのは先生なんだよな。改めて反省した。
母は「まぁまぁ」と口元に手をやってから、再びにっこりと人懐こい笑みを浮かべた。
「どうせ私の堅物娘が考えたことなのだから、先生を責めるつもりは毛頭ありませんわ。お気になさらず頭を上げて」
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます!これからもバンバン頑張ります!一気に読んでくださってうれしい…これからも何卒よろしくお願いいたします!! (2019年5月11日 19時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - このお話大好きです!一気に読んだんですけどすっごい楽しいです!これからも頑張ってください! (2019年4月4日 2時) (レス) id: b4edfa4067 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あだ名がンゴって…さん» うわー!ありがとうございます!そういっていただけただけですごくうれしいです。コメント励みになります。これからも頑張らせていただきます! (2019年4月1日 21時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
あだ名がンゴって… - 初コメ失礼します。あなたの文才、ください(切実)めっっっっちゃ好きですもうなんなんですか大好きです。更新頑張ってください!!! (2019年3月31日 11時) (レス) id: d0cbd630d9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - セツナさん» うっありがとうございます(泣)尊敬に値するようにもっと文才磨きます!ゆっくり亀さんに呪われていますが頑張って更新させていただきます! (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年6月25日 13時