第百十六話 ページ17
生徒会の扉をノックすればすぐに返事があって、扉を開ければ記憶の中と全く違わない生徒会の中の景色。
視線の先には、会長席に鎮座する会長さん。
「あれ、邦月さん」
「お久しぶりです、会長」
正確にいえばこないだぶり。あのあまり良い記憶とは言い難い別れかたに、ついつい口元が引きつってしまうのも無理はないだろう。
だが当の先生はまるで悪いことなどなかったかのように飄々と私の後ろからひょっこり顔をのぞかせた。
「これは、笹塚先生も! お二人お揃いで、今日はどうされたんですか?」
「今日は部活設立をしたくて来ました」
そう言いながら手元にあるプリントを会長の目にも映るように目の前にかざす。
すると会長は意外そうに両眉をあげて、がたりと席を立った。
私も会長の方へと遠慮なく歩み、そのプリントを手渡す。
「英語部、ですか?」
「はい。先生のおかげで随分と英語に興味を持ち始めた生徒がいて、ぜひ先生の顧問の元さらなる英語への理解を深めたいと」
「へぇ」
感心したように、会長はそのプリントを見る。
その上に書かれた名前も、彼にとっては意外なのだろう。特に千佳は、おそらく会長でも知っているほど成績的には問題児なのだから。
「この部の設立を許可したとして、部員それぞれの目標などはありますか?」
「はい、和樹くんは留学に興味を持っており、千佳は英語検定、そして樹は純粋に英語という語学に興味を持ち理解を深めたいそうです。部長を務める私も、大学は留学を視野に入れています」
隣で息を呑む音が聞こえる。
みんながこうやって英語という語学に必須科目だからという理由以外に勉強する目的を見出したのはあなたの授業があったからなんですよ、と言ったらあなたはきっと喜ぶだろうか。
照れ臭そうに笑って喜ぶんだろうな。
「なるほど。それでは、許可しないわけにはいけないな」
にこり、と会長が笑う。
断られることは想定していなかったので意外、というわけではないが、思った以上の快諾に、私は目をぱちくりと瞠目させた。
「何より、邦月さんが部長を務める部だ。信頼できるかどうかなんて、君の名前を見れば一目瞭然だよ」
「っ、……ありがとうございます」
慌ててぺこりと頭を下げる。
嬉しい。
自分の名前が、少なからずネームバリューになれるだなんて。そしてそれが、みんなの夢への第一歩になれるなんて。たとえあんな事件のあとでも、純粋に私を信用してくれる人がいることが、すごく嬉しかった。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます!これからもバンバン頑張ります!一気に読んでくださってうれしい…これからも何卒よろしくお願いいたします!! (2019年5月11日 19時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - このお話大好きです!一気に読んだんですけどすっごい楽しいです!これからも頑張ってください! (2019年4月4日 2時) (レス) id: b4edfa4067 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あだ名がンゴって…さん» うわー!ありがとうございます!そういっていただけただけですごくうれしいです。コメント励みになります。これからも頑張らせていただきます! (2019年4月1日 21時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
あだ名がンゴって… - 初コメ失礼します。あなたの文才、ください(切実)めっっっっちゃ好きですもうなんなんですか大好きです。更新頑張ってください!!! (2019年3月31日 11時) (レス) id: d0cbd630d9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - セツナさん» うっありがとうございます(泣)尊敬に値するようにもっと文才磨きます!ゆっくり亀さんに呪われていますが頑張って更新させていただきます! (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年6月25日 13時