第百十五話 ページ16
「あぁ、いいぞ」
けろり、と返された言葉に、私はなんとも言えない顔を返した。
いやまぁ、この人のことならば深く考えずに快諾するだろうとは思ってはいたが。
「どうせお前が部長なんだろう?」
「不本意ではありますが、まぁそうなるでしょうね」
「ちゃんと英語を習いたい、っていうやつだけ入部させるんだったらいいぞ」
「私目線ではよくわからないので、選別は千佳に任せます」
あの子は直感が野生動物並だし、不純な動機で入部してくる子はすぐ見つけることができると思います。
そういえば、先生は苦笑を返してきた。
「まぁ、いいよ。ここにサインすればいいんだろ」
私が持っていたペンを抜き取るようにとっていき、顧問の欄に流れるような動きでサインをした。
ちらりとそれを見れば、なんと英語だ。珍しい。
「英語なんですね」
「あぁ、まぁ必要書類は全部英語でサインしてきたからな。慣れと、まぁ、統一した方がいいだろうと思って俺のサインは全部英語だ」
「へー、いいなぁ格好いい。私も筆記体習いたい」
「あぁ、カーシヴか。授業では教えらんないし、ちょうどいいから部活で教えるか」
きょと、と顔をあげて先生を見れば可笑しそうに私の頭に手を置いて軽くわしわしと撫で回される。
子供扱いされているみたいで不満だったのを顔に出せば、そんな私の表情を隠そうとするかのように設立許可願いのプリントを顔面に押し付けられた。
「ちょっと!」
「ははっ、悪い悪い」
悪いと思ってなさそうな顔で、先生は私にペンを返す。
何はともあれ、これであとは生徒会にこの許可願いを提出するだけだ。休み時間が終わるまでまだ時間があるし、ちゃちゃっと行って済ませてこようか。
「じゃあ先生、ありがとうございました」
「おう。今から生徒会に行くのか?」
「はい」
そういうと、先生はしばし首を傾げてから、席を立つ。
そして準備室から出ようとしている私の背後まで歩いてきた。
「……どうしたんですか?」
「俺も行く」
「……理由は?」
「なんとなく」
別にいいだろ、と何気なしにいう先生に私は首をかしげる。
面倒臭がってそういうのはやらない性格だと思っていたんだけど。まぁ、いいか。
沢山の女子の視線と羨望と嫉妬が入り混じった空気を縫うようにして私たちは並んで廊下を歩く。
もう慣れたものだし、余裕だが先生はものすごく居心地悪そうだ。
「なんかすまん」
「もう慣れました」
そうだよな、と困ったように笑えば女子の黄色い声がとんできた。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます!これからもバンバン頑張ります!一気に読んでくださってうれしい…これからも何卒よろしくお願いいたします!! (2019年5月11日 19時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - このお話大好きです!一気に読んだんですけどすっごい楽しいです!これからも頑張ってください! (2019年4月4日 2時) (レス) id: b4edfa4067 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あだ名がンゴって…さん» うわー!ありがとうございます!そういっていただけただけですごくうれしいです。コメント励みになります。これからも頑張らせていただきます! (2019年4月1日 21時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
あだ名がンゴって… - 初コメ失礼します。あなたの文才、ください(切実)めっっっっちゃ好きですもうなんなんですか大好きです。更新頑張ってください!!! (2019年3月31日 11時) (レス) id: d0cbd630d9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - セツナさん» うっありがとうございます(泣)尊敬に値するようにもっと文才磨きます!ゆっくり亀さんに呪われていますが頑張って更新させていただきます! (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年6月25日 13時