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第九十二話 ページ43

ようやく樹が森の出口にたどり着く。それは軽く段差みたいになっていて、樹は右足をそこにかけた。

「っぉ?」

喉から絞り出されたようなそんな声が目の前から聞こえて、私の視界の中の樹がぶれる。
違う、そうじゃないと理解するよりも先に体が動く。頭の中は真っ白で何も考えられない、これが条件反射というやつか。
右に傾いていく樹のパーカーの袖を掴む。引っ張られる。腕に力を込める。引っ張る。後ろから手が伸びてくる。樹が少しだけ軽くなる。これで大丈夫。すべてがコンマ一秒くらいの間でゆっくりと起きた。
よかった、と一息つこうとした私の目に入るのは、目を見開いている樹の顔。
すべてが速すぎて、同時に遅すぎて、頭の処理が追い付かない。

今度みんなの視界から消えたのは私の体だった。
無意識に伸ばした手が宙を切る。滑り落ちる足は次第に足場を失って、ついにバランスを失って、地面から離れた。
喉がつぶれたかのようだ。声が出せない。だけどあぁもう手遅れだってことはわかった。
耳に残ったのは千佳が必死に私の名前を呼ぶ声。
やがてみんなの視界から私の姿が消えたと同時に、みんなの姿が私の視界から消えていった。


***


「先生!」

次に来たグループたちに問題を出している笹塚のもとについ数分前に見送ったばかりの生徒たちが駆けてくる。だけど一人足りない。
それに彼らの必死の形相。しかもそのうち一人はひどく泣いている。
怪我でもしたのだろうかとのんきな思考の自分自身を、笹塚はのちに恨むことになるだろう。

「助けてください!!」

その一言だけで場の雰囲気は一気に変わる。
彼自身もきっと油断していたのだろう、あの優等生がそんな不良な行いをするはずがないと。

「奏音が、崖の下に……!」

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設定タグ:ツンデレ , ドS , オリジナル   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年11月14日 20時

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