【2】サド教師とツンデレ生徒【名前変換オリジナル】

第六十六話 ページ17

「……邦月」
「あー……せん、せい……」

しまった。
こんなタイミングで会うことは予測していなかった。
しかも、明らかにサボってましたってバレバレ。

……これは、やばい。

「……あの、その……これは、です、ね……」

必死で言い訳を頭の中で模索する私を見て、先生はなんとなく状況を把握したのだろう。
溜息をついて、私を押しのけ部屋に入る。
そして持っていた教材を机に置き、椅子に腰かけた。

「……授業行け」

冷め切った声。
まるで赤の他人に対するような、まったく興味を持たない、そんな声。
言葉は諸刃の剣とはよく言ったものだ。
まるで貫かれたように、心臓が、内側から握りしめられたように、痛む。

そんな感情をおくびに出さず、ぐっと拳を握りしめる。
そこに立ち尽くしていると、さらに先生からの声が降りかかる。

「聞こえなかったか？授業に行けと言ったんだ。 朝から一つの授業も出ていないそうだな。 三限目の教師が俺に伝えてきた。 とっとと行け、俺に迷惑がかかる」

そうか、先生は担当だから……全部、バレてる。
最初から意味なかったんだ。
言い訳も、理由も、何もかも。

握りしめていた拳を緩める。
爪が肌に刺さっていたかったけど、そんなもの心の痛みに比べればどうってことなかった。
目頭が熱くなって、堪えられなさそうだ。

泣くのなんて、何年振りだろう。

「……先生、は……私の、こと、もう、嫌い……ですか」

馬鹿みたいに声が震える。
あぁ、違う。こんなことが聞きたかったわけじゃなかったのに。

どうしてあの時怒ったんですか。
どうしてそんな態度を取るんですか。
どうして、私に優しくしてくれていたんですか……。

「……どういう意味だ」

少しだけ動揺した先生の声。
ちょっとだけ元の先生に戻ってくれた安心感から、私の瞳からとめどなく涙が溢れてしまう。

「っ……先生、が、関わるなって、ゆったら……私、も……せんせ、に関わらなっ、から……」

嗚咽のせいで、言葉がうまく喋れない。
ちゃんと思いが伝わるだろうか。その焦燥が、逆に嗚咽を悪化させる。

「せんせっ……も、わた、私、……っと、話し、たく、ない、の……？」

ぐしゅぐしゅと、子供のように涙を拭う私はさぞ滑稽だっただろう。
それでもその涙を止める術はなくて、羞恥にさらに涙を零すだけだった。

だけど、嗚咽すらも次の瞬間には止まってしまう。
優しい温もりに、私を包む先生の匂い。
目を見開いた私を、先生はさらにきつく抱きしめた。

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