【2】サド教師とツンデレ生徒【名前変換オリジナル】

第九十五話 ページ46

助けが来るまで何分かかるだろう、何十分かかるだろう。すぐに助けが来るといいな。痛いし寒いし。そう思いながら左手を持ち上げて腕時計を覗いてみたけど、案の定画面は割れてもう使い物にならなくなっていた。気に入っていたのになぁ、レトロなデザインで。そう思いながら右手でそれを外しその場に捨てる。

ここは太陽が当たらないからひどく暗くて寒くてジメジメしている。座り込んでいる地面もじっとりと濡れていて、座り心地は最悪だ。ジーパンにもその水分は滲みていて、とても心地が悪い。早く、早く、早く助けが来ないかな。
早く、だれか来ないかな。
痛みはどんどん熱を持ってじくじくと私を苛み始める。まるで心臓の鼓動と共鳴しているように一定の間隔を保って響く痛みに、私は顔をしかめ歯を噛み締めた。
痛いな、痛い。痛い、すごく痛い。もう痛い本当に痛い。
早く、早くだれか来ないかな。早く、
ぽつりと唇が薄く開いて言葉を紡ごうとする。自分が何を言おうとしているのか、自分でもわからなかった。だから自分が何を言おうとしているのか、自分の言葉を待っていた。

「……せ」

その時上からズザザと枝や葉っぱをかき分けて滑り落ちてくる音があたりに響きわたり私の鼓膜をひどく揺らした。
耳鳴りがするほどの静寂にその音はひどく不釣り合いで、私ははじかれたように見上げる。何かが迫ってくる、それもすごい勢いで、私が転がり落ちた道を、何か、いや、誰かが。
誰かって、私は、きっと、たぶん、答えを知っているんじゃないか。
見開かれた私の瞳に見えたのは紛れもない、そう、知っていた、間違えるはずもない、最初からわかっていた。
彼がいた。

「……せん、せい……」
「……邦月」
衣服がところどころ切り裂かれている、もしかしたらどこか擦り傷があるのかもしれない。だけど私より断然無傷だ。それに比べてボロボロな私。出所不明の羞恥心が少しだけふわりと浮かび上がった。
だけどそれよりも先に、私が何かを口にできるより先に、彼の怒号が飛んだ。

「何を考えてんだテメェは！！！」
「ひぇっ」

びっくりしすぎて思わず間の抜けた声が出た。ひぇってなんだひぇって。それこそ恥ずかしい。
だけど先生がキレている。それも多少じゃなくて本気で。テメェなんて、そんな言葉遣いをする先生を見たことがない聞いたことがない。顔はひどくしかめられて、眉根は寄せられ深くしわが刻まれ、爛々と怒りをともすその瞳はまっすぐに私を睨んでいた。

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