第四十二話 ページ43
最近では見慣れてしまった濡れたような黒髪が、柔らかそうに風に舞う。
灰色の瞳は、優しそうに細められていて私を捉えた。
腕を組んで壁に寄りかかっている姿はモデルだと勘違いするくらい整っていて、思わず私の中で時が止まってしまう。
何度か開閉した唇で、その名を呼んだ。
「……笹塚……先生」
「ん？」
優しい声に、優しい手つき。
まるで壊れ物でも扱うような手で私の頬をゆっくりと撫ぜた。
どこか冷たい彼の指が、擽るように私の頬を行き来する。
そしてそのまま、
「いっ！」
思いっきり頬をつねられた。
激痛にぶわりと涙が膜を張り、私は先生を睨む。
優しそうな表情から一変、いつもの自信家の笑みを浮かべた先生はすぐに指を離した。
代わりに顔を私の耳元まで近づけ、こう囁く。
「ゲームオーバーだ、馬鹿」
「っ……！」
慌てて右手で耳を包む。
吐息がかかった耳はなぜか熱を持っていて、ぞわりと肌が粟立つ。
思いっきり目の前の教師を蹴飛ばしたい衝動に駆られる……が、そんなことしたらどんな処分を喰らうか分からないもので寸でのところで我慢する。
「な、なんで分かったんですか……！」
「ずる賢いお前のことだからな。 この学校あんま大きくもないし、お前の考えそうなことをあてはめて考えてみた」
「そ、そんな探偵みたいなこと……」
「大学では心理学も受けていたんだ」
得意そうな先生の顔。
必死で先生のことを睨むが、どうやら私の睨みはまったく効力を持たないらしい。
逆にその笑みが深まっていってしまう。
「お前のことだから、体育館周辺を探す奴は少ないと思ったんだろうな。 通常、子は鬼から遠くへ遠くへ行こうとするし、それを逆手に取ったな？さらには、お前のずる賢さからして鍵がかかっている場所に隠れるだろうなとは予想していた。 だから体育館周辺の、鍵がかかった部屋と言ったらここしかないだろ」
「で、でもそんな確証のない穴だらけの推理……！」
「あぁ、だから念のため校舎の中をぐるりと見まわってきた。 最後にここを覗いたら思った通り、お前がすやすや間抜けヅラで寝てたわけだけどな」
バッと両手で自分の顔を包む。
そうだ、つまり寝顔を見られたというわけだ。
羞恥にぶわりと顔が赤くなって、口を真一文字に結ぶ。
私の寝顔は、そんなに間抜けなのだろうか。それを、家族以外の誰かに見られたということで。
「まぁ、チェックメイトだ。 ほら体育館行くぞ、馬鹿委員長」
「……悔しい」
先生の笑い声。
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アミ(プロフ) - めっちゃ面白いです！文才ありますねー！尊敬しますよ〜。 (2020年7月8日 20時) (
レス) id: 86dee03899 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 猫沢さん» ひゃー一作目のコメントなので確認できてませんでした！すみません感覚で掴む派なので文法苦手なんですよー！訂正有難うございます！変えておきますね！返事遅れて本当にすみませんでした！！ (2020年4月13日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
猫沢(プロフ) - 続編前の作品にコメントするかどうか迷ったのですが、第七話のhaveのくだり、あれ過去形じゃなくて過去分詞形では…。すみません、気になったらコメントしちゃうタイプなんですううう… (2019年6月5日 1時) (レス) id: 3e8fc16044 (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - お願いあるんだけど良いですかな?るろうに剣心の張×女体化そうじろうの恋愛長編を作って貰いますかな?始まりの出会いは幼少期で志々雄を出会う前で (2018年10月31日 16時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - matsumatsu1234さん» コメントが遅れて申し訳ありません！ウザかったですかね？でも根はいい子なので嫌わないであげてくださいｗｗ (2014年12月8日 19時) (レス) id: 37256eb247 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧ | 作者ホームページ：
作成日時：2014年6月9日 0時
