第三十九話 ページ40
そんなこんなのカオスの中、改めてようやく鬼ごっこはスタートする。
先生にはとりあえず適当に取り繕っておいた。
会長の耳に届いたらきっと会長落ち込むだろうしなぁ……
なんてことを、走りながら考える。
まるで蜘蛛の子を散らすように走り出した子たちは、前後左右好きなところに向かって走って行った。
私も、とりあえずは鬼たちの出発を待つために手ごろな場所を探す。
どこがいいだろう。
「奏音！」
「樹……そういえばあんたも子だったっけ」
「おう。 どこに隠れる？」
「プライバシーの侵害はお断りしています」
駆け足ながらも両手でバツ印を作る。
それを見た樹は不満そうに眉根を寄せた。
「ずっりー！いいじゃんかちょっとくらいバラしても」
「樹が裏切らないという確証はない」
「どこのサバイバルゲームだよそれ」
先生との賭けがかかっているのだ。
そう簡単にあけすけと自分の墓穴を掘りたくはない。
それに、この隠れ場だって毎日放課後5分を無駄にして捜索して思考してようやくたどり着いた隠れ場なんだし、バラしたくはない。
皆に「どこ隠れてたの？」と聞かれてバラすとちょっと格好いい場所だ。
「ちぇ、ケーチ！」
「なんとでも言え。 ま、樹も頑張ってね」
「おう、サーンキュ！」
分かれ道に差し掛かり、私達は二手に分かれた。
樹の後姿が見えなくなった瞬間、私は足を止める。
そして左手の腕時計に目を向けた。
子がスタートしてから8分……
鬼がスタートするまで残り2分だ。
そろそろ行かないと間に合わないだろう、と私は踵を返す。
走り出せば、髪の毛がふわりと舞ってほっぺたを擽った。
適当に爪でその位置を引っ掻きながら、髪の毛を耳の後ろに留める。
なんとか遅くはない足で、体育館のすぐ裏にまでたどり着く。
荒い息を整え、どくどくと鳴る鼓動に耳を傾ける。
心臓が血液を送り出すたびに体中が燃えるように熱く感じて、だから体育はあまり好きではないのだと顔を顰める。
やがて体育館内が騒がしくなり、その数秒後に集団が走り出す音が振動として聞こえる。
その音を聞きながら目を瞑り、ふーっと口から長い息を吐く。
さわりと木々が揺れ音を立てる。裏庭は、よく人の心を穏やかにさせると思う。
「そろそろ……かな？」
体育館が静まり始めたころ、私は動き出した。
背中を預けていた壁をよじ登り出す。
あまりこういう行為は得意ではないけど、出来ないことはない。自称・それなりに身軽だし。
ひらり、と私はその中に入る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 390人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アミ(プロフ) - めっちゃ面白いです！文才ありますねー！尊敬しますよ〜。 (2020年7月8日 20時) (
レス) id: 86dee03899 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 猫沢さん» ひゃー一作目のコメントなので確認できてませんでした！すみません感覚で掴む派なので文法苦手なんですよー！訂正有難うございます！変えておきますね！返事遅れて本当にすみませんでした！！ (2020年4月13日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
猫沢(プロフ) - 続編前の作品にコメントするかどうか迷ったのですが、第七話のhaveのくだり、あれ過去形じゃなくて過去分詞形では…。すみません、気になったらコメントしちゃうタイプなんですううう… (2019年6月5日 1時) (レス) id: 3e8fc16044 (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - お願いあるんだけど良いですかな?るろうに剣心の張×女体化そうじろうの恋愛長編を作って貰いますかな?始まりの出会いは幼少期で志々雄を出会う前で (2018年10月31日 16時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - matsumatsu1234さん» コメントが遅れて申し訳ありません！ウザかったですかね？でも根はいい子なので嫌わないであげてくださいｗｗ (2014年12月8日 19時) (レス) id: 37256eb247 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧ | 作者ホームページ：
作成日時：2014年6月9日 0時
