第二十八話 ページ29
「取ったどー！」
そう叫びながらパンを高く掲げる千佳に、私は拍手を送る。
隣にいる樹も、大声で「サンキュー！」などと礼を叫んでいた。
可愛らしく髪の毛を揺らしながらこちらに走ってくる千佳。
それを見届けながら、私は壁に寄りかかっていた体を起こす。
両手には見ただけでも5個ほどパンがあり、なんでそんなに持ってきたの？と問いただすのを今か今かと私は待ちわびている。
「樹君はどれにするー？いっぱい買ってきたけど」
「うおっ、焼きそばパンあんじゃん俺これもーらいっ」
「樹君これ好きそうだなと思って取っておいたんだー」
「へへっ、サンキュな！」
リア充かこいつら。
思わず眉根を寄せてしまうほど、この二人の間に他人らしかぬ雰囲気が流れていた。
改めてみても、二人の距離は近い。
まさかとは思いたくないけど、最近私の周りでは恋愛沙汰が多い気がする。
とはいっても、先生と幼馴染との二つだけだけど。
「じゃ、ほら行こっか」
「はーい！」
「あ、んじゃあ俺はここで」
そう言い踵を返した樹に小さく手を振り返しながら、私達は出口に向かって歩く。
スキップ調でついてくる千佳を背中で感じながら、私は騒がしい購買を出た。
購買は随分と人気がすごくてなんとなくむわってしてたから、ちゃんとクーラーが利いている購買の外がとても気持ちいい。
ようやく息がつけて、私は深いため息をついた。
正直人が多いのはあまり好きじゃない。何故か分からないけどすごく疲れるのだ。
「あ、そうだそうだ結局教えてくれるんでしょ？」
「ん、何が？」
「宿題。 ね、お願い！反省してるから！」
反省？ 宿題してなかったことに対する反省だろうか。
まぁ、教えることに異議はないから教えるけど。
小さくため息をついてから、私は千佳のほうをみて頷く。
そんな私を見て、千佳はパンを落としながら万歳をし始めた。
正直友達の目から見ても、千佳ってちょっと電波入ってる気がする。
「ってかさぁ、今日もたっくん先生の授業あるんだよねぇ！」
「うん、そうだね。 さっきも言った気がする」
「言ったっけぇ？」
多分。私もうろ覚えだ。
だけど千佳はそんなことはどうでもいいのか、さっさと話を先に進めてしまう。
うきうきとした表情できゃっきゃと騒ぐ千佳は傍から見れば子供のようだ。
あえて言わないけど。
「英語の課題、完璧にやってきたんだぁ！褒めてくれたら嬉しいなぁ」
「今回のは結構しんどかったよねぇ」
馬鹿話とともに、私達は教室に着いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 390人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アミ(プロフ) - めっちゃ面白いです！文才ありますねー！尊敬しますよ〜。 (2020年7月8日 20時) (
レス) id: 86dee03899 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 猫沢さん» ひゃー一作目のコメントなので確認できてませんでした！すみません感覚で掴む派なので文法苦手なんですよー！訂正有難うございます！変えておきますね！返事遅れて本当にすみませんでした！！ (2020年4月13日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
猫沢(プロフ) - 続編前の作品にコメントするかどうか迷ったのですが、第七話のhaveのくだり、あれ過去形じゃなくて過去分詞形では…。すみません、気になったらコメントしちゃうタイプなんですううう… (2019年6月5日 1時) (レス) id: 3e8fc16044 (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - お願いあるんだけど良いですかな?るろうに剣心の張×女体化そうじろうの恋愛長編を作って貰いますかな?始まりの出会いは幼少期で志々雄を出会う前で (2018年10月31日 16時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - matsumatsu1234さん» コメントが遅れて申し訳ありません！ウザかったですかね？でも根はいい子なので嫌わないであげてくださいｗｗ (2014年12月8日 19時) (レス) id: 37256eb247 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧ | 作者ホームページ：
作成日時：2014年6月9日 0時
