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〜A〜
なんか……食べるとこをすっごい見られてる
食べ方が違うのだろうか?
一応、如月さんの真似をしてるつもりなんだけど
もしおかしなとこがあるなら、言ってもらえると助かる
私では何が違うのか分からない
忍田「Aの食べ方は綺麗だな」
「え、あ…そう……ですか…?」
褒められるとゾワゾワってした
褒められたことがないのか、褒められ慣れてないだけか
みんなで楽しく食べてるとまた人がお店に入ってきた
息を飲むような、絵本に出てくるみたいに綺麗な顔をした男性
イザナ「あぁ、ドア…閉めてくれるかな」
?『逃げられてしまうよ』
2人が重なった
無理やり蓋をしていた記憶が勢いよく飛び出す
ガシャンとお皿が割れる音に空気が変わって、私に向けられる視線は関心から好奇になった
逃げようともたついて椅子から落ちて……
そんな私を見て目を細めて笑った
音を立てずにゆっくりと近づいてきては、私の頬に手を添えて
イザナ「許してあげるよ。私の元を逃げたことは。だから戻っておいで。ここは……君の生きる世界ではないだろう?」
勘違いしていたんだ
全てを忘れてしまえば解放され何もなかったことに出来ると
そんなことないのに
過去は
イザナ「
まるで見てきたかのような口ぶり
呼吸が上手く出来ない
何度も記憶を封じて忘れているのに、この人が目の前にいるだけですぐに思い出してしまう
イザナ「君の時間を私に差し出すなら、私は君の求めるものを全て与えると約束しよう。物も人も……親の愛情が欲しいならば私が父親として君を愛してあげよう」
瞳の奥を覗かれると逆らってはいけないと錯覚する
イザナ「君はただ可愛い人形で在ればいい」
亜紀子『貴女は人形のように大人しくしていればいいのです』
あぁそうか
それでいいんだ
何も考えずに、ただ息をしてるだけ
私の存在理由も価値も、最初からそれだけだったんだ
抗うことは愚かなこと
他人の言葉に従っていれば傷つくことはない
この世界はこんなにも単純だったのだと思い知った
イザナ「君がちゃんと良い子でいられるなら、君の周りの人間には手を出さないと約束するよ」
私が選択を間違わなければ誰も傷つかない
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作者名:まゆ | 作成日時:2021年6月4日 9時