【忍たま】【タソガレドキ】~先輩達の恋の段~ (ページ3)

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夜空が白み始めてきたころ、ようやく昆奈門が野営所に戻って来る。

神妙な面持ちで。

「どうされました、組頭。」

「今から一刻後までに撤退する。支度をしろ。...一時休戦、ということでまとまった。」

「はっ、直ちに。」

帰ると聞き、尊奈門は安どしていた。

城に残してきたAが心配だったのだ。

城に到着すると、陣内左衛門と尊奈門はAの部屋に直行した。

女中に世話を任せているが、それでも心配だった。

何せ、二人とも嫌な予感がしているのだ。

戦中、城には少数の兵と忍びしか置いて行っていない。

もしそんなときにウシミツドキの忍者隊に奇襲をかけられていたらひとたまりもない。

不安とともに障子をスパンと開けると、うつむく医者と、泣きはらした顔をしている女中と、その視線の先には胴体に包帯を何重にも巻かれて眠っているAがいた。

嫌な予感は的中したのだ。

「A!!」

二人は同時に叫び、部屋に駆け込む。

遅れてやってきた昆奈門に、一人の忍びが走り寄ってきた。

「組頭、先日ウシミツドキの忍びの者が奇襲をかけてきました。撃退はできましたが、Aから目を話してしまい...申し訳ありません!!敵が背中に、鎖鎌で、傷を...!」

それ以上は泣いて言わなかった。

昆奈門は頭を抱える。

尊奈門は呆然とし、陣内左衛門はその忍びを攻め立てた。

なんてことだ。まだ幼く、無垢な心を持ったAは、この城の者皆の心の支え、癒しでもあったのだ。

そのAが...。

意識は戻らないが、死んではいない。ただ、物も食べないので長くはもたないだろう、と医者は言う。

全員その場で立ち尽くしてしまった。

その日以来、忍びたちの笑顔はもちろん、口数も減った。尊奈門においては、ろくに訓練にも出ず、一日中Aの部屋でボーっとするようになっていた。

家族のような存在であった、二人を亡くし、おまけにAまで失いかけている。

十一歳のもろく、壊れやすい心には耐えられない。尊奈門は日増しに食が細り、弱っていった。

さすがの昆奈門も、尊奈門までやせ衰えていくのを心配し無理にでも食べさせ、訓練にも参加させた。

訓練中も目は遠いところを見つめていたし、ふらふらしている。

心の中は、Aが助かってほしいということだけだ。

そんな執念ともいえる願いが、ついに神に届いたようだ。

尊奈門のもとに、陣内左衛門が走ってくる。