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いつだったか、風魔忍術学園に行った時以来の算学。
また、あの時あった彼の記憶の断片が脳裏に浮かんだ。
あの時はこれっぽっちもわからなかったが、今は彼のおかげで算学はすっかりものにしている。
たった一日だったが、決して忘れられない一日。
彼との会話を思い出し、ふふ、と笑みがこぼれる。
何時しか、あの日はAにとっても大切な思い出となっていた。
「ん?急にどうした。」
「昔のことを思い出していました。すみません。」
「お前な。まだ昔を懐かしむ年じゃねえだろ。」
腹を抱えて笑われるほど年齢不相応なことをした覚えはなかったが、あまりにも楽しそうに笑うのでAも少し、微笑んだ。
その授業も終わり、私はついに帰らなくてはならなくなった。
学園長室への足取りは露骨に重い。
「お、さっきの!そんな暗い顔してどうした!?」
振り返ると、あの元気のいい方がいた。
名前までは覚えていないが、とにかくこちらまで元気が出るほどの明るい人。
「まさか迷子か?!なははは!!この学園は広いからな!送ってやる!」
私を勝手に迷子と決めて、彼は私を肩車した。
「で、どこ行きたいんだ?」
「すぐそこの学園長室です。大丈夫ですのでおろしてください。」
「あ、もしかしてなんかやらかしたのか?!呼び出し?!」
私を下ろそうともせずに、またとんでもない推測をしだす。
「いえ、単に帰りたくないのです。」
すると突然私を下ろした。忙しい。
「帰りたくないの?」
今までが噓のように静かな声で聞かれた。
「楽しかったので。声をかけてくれてありがとうございました。そろそろ行きますね。」
「あ、...わ、私も楽しかったぞ!A!また会おうな!」
手を振ってくれる彼に会釈をして、向こうは名前を憶えてくれたのに覚えてないことに罪悪感を覚えつつ庵に向かう。
ふすまの前で名乗った。
「Aじゃな、入れ。」
ああ、ほんとに帰るんだ、これで。
学園長の斜め前に陣内左衛門がいる。
「どうじゃったかな?」
「とても、とても、帰りたくありません。」
「なっ、A!帰るぞ!」
「まあまあ。落ち着きなされ。そうかそうか、それほど良い時間を過ごしたんじゃな。よかったのう。気が向いたらまた来てくれ。そのときは生徒としてだとうれしいがの。」
「はい、もちろん。」
正門に、今日お世話になった方々が見送りに来てくれた。
門を出る。
私は万感の思いを込めて、ありがとうございましたと伝えた。
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めりかもち(プロフ) - ネコさん» ごめんなさい、非公開にしてたんです、修正箇所があったもので・・・ (2017年3月14日 14時) (レス) id: b21596c2f0 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ(プロフ) - 13話はないんですか? (2017年3月13日 18時) (レス) id: e74d9a9bc5 (このIDを非表示/違反報告)
めりかもち(プロフ) - yukiさん» わざわざありがとうございます! (2017年3月13日 13時) (レス) id: b21596c2f0 (このIDを非表示/違反報告)
めりかもち(プロフ) - そうです、ありがとうございます! (2017年3月13日 13時) (レス) id: 62949f6d7f (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - イベントの開催者です!こちらの作品で合ってますか? (2017年3月12日 14時) (レス) id: af8dad474e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めりかもち | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/merikamochi/ninntama
作成日時:2017年2月23日 18時