５７: 在るべき形 ページ7
疲れた体を何とか引きずって楽屋に戻ってきたら、椅子に座り込んだまま動きたくなくなってしまった。
既に着替え終えた奏が白けた視線を向けてくるけど、疲れたんだからしょうがない。
それでもノロノロと立ち上がって、着替えをしようと奥へ向かいかけるとスマホが震えた。
「ああ、俺のか。……もしもし、敬人？」
蓮「帰ったら話したいことがある。明日で良い、道場に来てくれ」
「はぁ？何だよいきなり。今ここで言うんじゃ駄目なわけ？」
蓮「駄目だから言っている。分かったな」
俺が了承もしないうちに通話が切れて、意味が分からずため息を吐く。
奏が一体なんだと目で問いかけてくるから、わざわざ振り返って口を開いた。
「敬人が明日にでも道場に来いって言うんだけど。俺なんかしたっけ？」
奏「えぇ…何かしたから呼ばれたんじゃないの？」
「心当たりは無いんだけど」
顎に手を当てて考え込み始める奏を置いて、着替えるために楽屋の奥へ進んだ。
ーーー
「ただいま〜」
蛍「おかえりなさい！」
今日は疲れたから自宅に帰ろうと２人で話して今帰ってきたのだが…
「蛍！？なっ…なんでここに？あ、いや、おかえり」
蛍「うん、ただいま！今日のライブ見てたよ。すごかったね！」
「いや待って待って。説明が欲しい」
口元に手を当てて、信じられない光景に瞬きする。
固まっていると、奥からレオとルカが出てきた。
ル「おかえりなさい♪」
月「おかえり。ほら蛍、体冷えるから早く上がって。Aも着替えたら降りてきて」
「え、ああ、うん」
相変わらずの豹変ぶりに苦笑しながらも、素直に言われる通り行動した。
聞けば、蛍は今日のライブを見るために一時退院したらしい。前から許可は下りていたが、今日確実に元気でいるために今日退院したとか。
嬉しい話に顔が綻ぶ。
義母さんも義父さんも褒めてくれて、なんだかこそばゆい。
こういうのが家族として在るべき形なんだろう。偶の贅沢というのも良いかもしれないけど、やっぱりこんな時間は愛おしいものだ。
蛍「ライブ、また見に行くね！レオ兄もライブがあったら教えて。どんな手を使っても見るから」
月「ああ、ありがとう。おれとしては元気で居てもらうことが最優先なんだけどな」
満ち足りた笑顔を溢れさせる蛍に、家族全員で笑い合った。
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作者名：瑠璃烏 | 作成日時：2019年12月14日 3時
