８９: 家へ ページ39
結局その日はレオと話さないまま学校が終わってしまった。ちゃんとけじめをつけないと、家に帰ろうにも帰れないんだけど…
そうさせたのは自分だから謂わば自業自得だが。
ため息を吐きながら校門へ歩いて行くと、英智が車を呼んでくれていた。
「うっわ久し振りすぎる…」
英「ちょっと。兄さんを目の前にして何の言葉もないの？」
初めはポカンとしていた従者達が、英智の言葉でハッとしたように頭を下げた。
お辞儀が綺麗すぎて苦笑しながら、戸惑い気味の従者に開けられたドアをくぐって車に乗り込む。座り心地が良いし何より広い。
学院の生徒達から物凄く視線を集めているけど、もう今日はお昼から注目を浴びすぎたので気にならなかった。
「懐かしいな〜、10年振りだっけ？」
英「驚いたんだよ。月永くんが持ってた写真の君が兄さんと同じ顔だったんだから」
「写真？」
英「そうだよ。兄さんと月永くんと妹さん達が4人で笑ってる写真」
レオがその写真を持っていたことが嬉しくて、思わず笑顔になる。
俺が引き取られて少しの頃、皆んなで撮った写真だ。なんで英智が気付いたのかと思っていたら、その写真を見たからか…
納得して頷き、過ぎていく街並みを眺めた。
ーーー
「あぅ…疲れた……」
紅「何だよ、なんかあったのか？」
「実の両親に会ってきたんだけどさ」
紅「おう、どうだったんだよ？」
結果的に言えば、良かった。
怒られた訳でもなく、寧ろ号泣しながら抱きつかれた。「心配したのよ、どこに居たの」とか「よく帰って来た」だとか。
泣きながら色んなことを聞かれて、その間ずっとお利口さんにして丁寧に応対していたんだから疲れもする。
それを紅郎に話すと苦笑され、俺もつられて笑った。
「そういえばそういう感じだったなって。溺愛されてた記憶があるわ」
な「愛息だったんだな〜。というか、事実が分かってみれば２人ってそっくりだな」
「そう？まあ兄弟だしな」
まじまじと顔を見つめてくるなずなに、笑って答えた。
家に帰って怒られたらもう一生帰らねぇと思っていたけど、もう一度考える必要がありそうだ。
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作者名：瑠璃烏 | 作成日時：2019年12月14日 3時
