78: ワガママ ページ28
ある冷たい曇り空の休日。
蛍は最近調子が良くて一時退院を許されたので、数ヶ月振りに4人でおやつを囲みながら、楽しく談笑していた。
このところ学校では常に気を張っていたから、こういう気を抜ける場所は久し振りだ。
蛍が姉らしくルカを可愛がっているのを見ると、どんどん成長していくんだなぁと実感する。
談笑する様を眺めながら、ふと口を開いた。
「なぁ、ちょっとワガママ言ってもいい?」
月「珍しいな?いいけど」
2人も頷いたのを見て、少し微笑んで提案する。
「明日どこか行かない?どこでも良いから、どこか遠くに行きたい」
蛍「そういえば前にお兄ちゃん達2人だけで向日葵見に行ったんだって?ずるい!私もお出掛けしたい!」
ル「私も、行きたい」
ルカと蛍が同時に頷いた。少し不服そうな表情で賛成の意を示す蛍の頭を撫でて笑い、レオに顔を向けて尋ねる。
「ははっ、元気で何より。レオは?また何処かに遠出しようよ。良いだろ?」
月「もちろん。Aの珍しいワガママだしなっ」
「あははっ、もうワガママは最後だから。明日だけ付き合ってくれ」
満面の笑顔で頷くルカと蛍に微笑み返して、いつもならば控えるべきチョコレートに手を伸ばした。
ーーーレオside
「なぁ、ちょっとワガママ言ってもいい?」
Aがそう言った時、なにか予感がした。なにとは言えないけど、どこか寂しさが胸を締め付けるような、予感が。
セナみたいにいつもならお菓子はあんまり食べないAがパクパクと食べていたから、その違和感の所為もあったのかもしれないけど。
蛍の頭を撫でる大きな手が、優しく細められた目が、柔らかい笑顔が、とても儚い。
どこか既視感がある。この儚さを、おれは知っている。そんな気がしてならない。
遠出をしようと笑ったAに、おれからも笑顔を返した。
月「もちろん。Aの珍しいワガママだしなっ」
「あははっ、もうワガママは最後だから。明日だけ付き合ってくれ」
胸がぎゅっと締め付けられるみたいだった。
「最後」なんて、言わないで___
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2019年12月14日 3時