６２: 青春し足りない ページ12
皆んなが各々練習を始めると、隅っこに座っていた俺の隣に敬人も座り込んだ。
そういうのって珍しくて、思わず目を見開く。何か悪いかとでも言うように見返してくるので笑いながら首を振って、司の綺麗な所作を眺めた。
矢が的中する心地いい音が響く中、敬人がその低い声で俺を呼ぶ。
何だと尋ねながら、寄ってきた猫の背中を撫でた。
蓮「月永に隠していたとはな……それでも口止めくらいしておけ」
「言う機会も理由も無かったから。いつか話すけど」
蓮「……これからどうする気でいる？」
「流れに身を任せるよ。その時々で」
もふもふの体を抱き上げて顔を埋めると温かくて、動物に癒しを求める人のことが理解できる。
緩んだ表情もそのままに猫を撫で続けていると、また敬人は話し出した。
蓮「貴様のせいで英智と俺の仲が破綻したらどうするつもりでいる？」
「それは無いだろw まぁその時は、責任持って俺が恨まれ役になるからさ」
蓮「そうなる前に、今。流れに身を任せる気はあるか？真実を話す気は」
すぐに返事ができなくて、少しの間沈黙が流れる。今サラッとすごいことを言われた気が…
キョトンとする敬人に慌てて首を振った。
「待て待て待てそんな簡単に言われても無理だけど！？」
蓮「お、おい静かにせんかっ」
「あ……悪い、気にしないで」
小声で話していたのにいきなり俺が大声を出したから皆んなが驚き振り返って、何気なく場を繕う。
弓弦と司は何事も無かったようにまた弓を引き始めている。
でもレオは違った。
月「なになにっ、何が無理なの？」
「何でもないから！ごめんな大声出して。ほら戻れ」
月「えぇ〜っ、２人でコソコソとおれの名前を出して話してたのに？」
探るように細められた目を直視出来ずに立ち上がると、レオも負けじと立ち上がって見上げてくる。
変な沈黙が流れてしまってどうしようもなくなると、敬人が仲裁に入ってくれた。
蓮「２人ともそこまでにしろ。朱桜と伏見に悪いだろう」
「……レオ」
ムッとした表情で見上げてくるレオの頭をポンポンと撫でるとやっぱり払いのけられて、その手をだらりと下ろす。
「悪いなレオ、もう少しだけ待ってくれ。」
月「………はぁ…、まあいいけどっ」
「いい子いい子」
ため息を吐くレオの背中を押して、また猫を撫でた。
「敬人、そういうことだから。本当にもう少しだけ待って。まだ青春し足りない」
敬人は俯くように頷いた。
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作者名：瑠璃烏 | 作成日時：2019年12月14日 3時
