７４: 可哀想 ページ24
海外で活動すれば確実に名声を得られる。俺にとってはチャンスだし、今のユニットとして活動するなら奏にとっても良いことではある。
でも少なくとも、今のまま、また外国に逃げるなんて俺には無理だから。
俯くと、零が窓の外を眺めながらゆっくりと言う。
零「……可哀想な奴だなお前は」
「それ前にも聞いたよ…」
その言葉に、胸がぎゅっと苦しくなった。
今まで、自分のためになると思って自分のためにしてきたことは必ず誰かを傷つけた。そうしたら、そのうち自分のために動くことが怖くなって
それでも生き方は簡単には変えられなくて、何度も何度も周りを傷つけた。
それがトラウマみたいになっているのに、次は大切な人のためにしたことがもう１人の大切な人を傷つけていたことに気づいて…
もう無理だと蹲ったら、立って戦えと迫られた。
行動していれば誰かを傷つけるのに、立ち止まることも許されない。そんなのは、苦しくていつか潰れてしまう…
「なあ零、自分のためにって思うことはそんなに…」
零「……前の続きか？」
揶揄い混じりに言ってくる零に、真剣な視線を返して言う。
「そんなにダメなことか？傲慢だって？」
零「A…」
自身を嘲笑して、強く手を握りしめた。
「可哀想だよなぁ…？」
零「お前な…」
「それなら変われって？零みたいに？そんなの無理に決まってるだろ」
言っていて苦しくなってきて、服の胸元をぎゅっと掴む。複雑そうな表情を浮かべる零を、気付けば睨みつけていた。
「レオがルカが蛍が、奏がいる。今突然俺が変わったらどう思うだろうな？義母さんは？義父さんは？」
零「A」
「傲慢な生き方をしてきたお前が何を今更って思うだろ！俺とお前は違うんだ、今更変われない。俺はもう一度変わってるんだから！」
零「A！」
「っ…！？」
いきなり零に胸ぐらを掴まれてハッとした。
零の表情は、久し振りに見る怒った表情。何に怒っているのかは分からないけど、俺が怒らせた事は分かる。
何度か深呼吸を繰り返して落ち着き、その手をそっと解いた。それでも変わらず零は苦い表情をしている。
その表情を見ているのが辛くて、逃げるように部屋を飛び出した。
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作者名：瑠璃烏 | 作成日時：2019年12月14日 3時
