57 ため息 ページ7
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風の呼吸 伍ノ型 木枯し颪
斬られた竹がガラガラと転がっていくのを見ながら顔を顰める。
何かが違う気がする。何か分からないけど違和感がある。いくらやっても体に馴染まないような…
刃毀れしてしまっている刀を見てため息を吐くと、背後からいきなり声を掛けられて肩が跳ねた。
「風の呼吸はAに合ってないんじゃない?」
「!?」
「いくらAが模倣が得意だって言っても自分に合った呼吸じゃなきゃ使い熟せないよ」
「む、無一郎…!」
背後から両腕が回されて束を握る手に手が重なり、抱きしめられるような体勢になって身を縮こまらせる。
無一郎はそのままジッと刀を見つめ、少しして体が離れた。
「やっぱり。刃毀れしてるし、風の呼吸は諦めたら?」
「うん……。でも折角教えて頂いたし…」
でもこれ以上刀が刃毀れするのは困るし、自分に合っていない事は何となく分かるし…
ああ、まただ。
また自分で決められない。どうしよう…
深くため息を吐いて、空を見上げた。
「……やめた方がいいと思う?」
「うん」
「じゃあ、やめておこうかな」
また人に意見を求めてそれを受け入れて……これが何度目かというよりも、自分で大事な事を決断した事の方が片手で数えられる程度な気がする。
またため息を吐いて刀を鞘に納めると、唇に人差し指が触れて機械のように固まった。
目の前には悪戯っ子のような笑みを浮かべる無一郎が居て、ズイッと顔を近付けてくる。
「ため息ばっかり吐かないの。幸せが逃げるよ」
「幸せが逃げる…?本か何かで読んだの?」
無一郎らしくない発言にそう問い掛けると、無一郎は思い出そうとしているのか眉を顰めて唸る。
少しして出てきた言葉に、何故だか胸が苦しくなった。
「えっと確か…杏花さんが教えてくれた気がする」
「…杏花が……そう、なの」
ぎこちない笑みになってしまったと思う。でも何だか釈然としなくて、胸に蟠りが燻って晴れないのだ。
不思議そうに名前を呼ばれたけれど、振り返らずに屋敷へ急いだ。
こんな顔見られたくない…
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瑠璃烏(プロフ) - いちごぱふぇさん» (今更かよって感じですが返信させて頂きます(ー ー;))ありがとうございます!こういうチートキャラ的なの書いてみたかったので作者も楽しかったです。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
いちごぱふぇ(プロフ) - ああもう好きです!!!!好きすぎて好きが止まんないですどうしてくれるんですか! (2020年7月7日 20時) (レス) id: e2dd6d7f46 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ゆりなんぽんさん» ぜひ拝読させて頂きます!改めて、最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年4月20日 22時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - manamimoon0511さん» ありがとうございます!楽しんで頂けたのなら本望です(´∀`*) (2020年4月20日 21時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
manamimoon0511(プロフ) - 凄く面白かったし素晴らしかったです!!ほんっとに有難う御座います!!!! (2020年4月20日 18時) (レス) id: 0aa1fe61f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 x他1人 | 作成日時:2020年4月2日 10時