93 陽光に霞む ページ43
杏花side
「お姉ちゃん!!何してるの!?どうして日向に…っ早く日陰に戻って!」
「杏花、こっちに」
「え…?」
このままでは灼けて消えてしまう、どうしようと焦る私を他所にお姉ちゃんが手招きする。
涙で揺れる視界もそのままに、広げられた腕の中へ飛び込んだ。
……何でだろう。
双子、だからかな。
お姉ちゃんはもう死のうとしているんだと直感的に分かった。言われた訳じゃ無い。死に急いでいるような人間でも無かったけど。
でも、分かった。
「杏花、ごめんね」
「謝るなら死のうとしないで…っ」
「ごめんね…」
火傷をしたように灼け死んでいくのだと聞いていたけれど、いま私を抱きしめているお姉ちゃんはそんな事にはなっていない。
確かに灼けているのだけれど、火傷みたいに皮膚が爛れたりはしていない。
まるで蒸発するような、灼けた部分から段々と霞を纏っていくような…雲となって空に昇っていくような消え方。
ちっとも汚くなかった。酷くなかった。
引き止める事も、出来たのだろう。
無理やり日陰まで引っ張っていけば良いだけの話なんだから。
でも、霞となって消えてゆく姉の表情が余りにも穏やかで幸せそうだったから…
「お姉ちゃんっ…ありがとう…ありがとう…!」
「独りにして、ごめんね。……ありがとう」
私を抱きしめる腕の力が強くなったと思った瞬間、私が抱きしめた物は…
姉の隊服と、羽織、そして日輪刀だった____
ーーーAside
杏花が泣きそうに顔を歪めて、日陰に戻れと叫んだ。
無一郎はペタンと座り込む私の隣に膝をついて、そっと背中に手を置いて囁くように言う。
『A、杏花さんを抱きしめてあげて』
「杏花、こっちに」
腕を広げると杏花は驚いた顔をして、でも素直に駆け寄って来て腕の中に飛び込んだ。
あったかい…
「杏花、ごめんね」
「謝るなら死のうとしないでっ…」
「ごめんね…」
もう手が消えかけている。
肩を震わせる杏花の背中をその手で優しく撫で、肩口に顔を埋める。
「お姉ちゃんっ…ありがとう…ありがとう…!」
「独りにして、ごめんね。……ありがとう」
華奢な体躯を抱きしめる腕に力を込めた時、無一郎がふっと笑って、その瞬間に私は霞となり雲となった。
.
117人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠璃烏(プロフ) - いちごぱふぇさん» (今更かよって感じですが返信させて頂きます(ー ー;))ありがとうございます!こういうチートキャラ的なの書いてみたかったので作者も楽しかったです。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
いちごぱふぇ(プロフ) - ああもう好きです!!!!好きすぎて好きが止まんないですどうしてくれるんですか! (2020年7月7日 20時) (レス) id: e2dd6d7f46 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ゆりなんぽんさん» ぜひ拝読させて頂きます!改めて、最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年4月20日 22時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - manamimoon0511さん» ありがとうございます!楽しんで頂けたのなら本望です(´∀`*) (2020年4月20日 21時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
manamimoon0511(プロフ) - 凄く面白かったし素晴らしかったです!!ほんっとに有難う御座います!!!! (2020年4月20日 18時) (レス) id: 0aa1fe61f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:瑠璃烏 x他1人 | 作成日時:2020年4月2日 10時