霞の中では逢瀬も刹那 〈弐〉

87 危険分子 ページ37

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鬼化していても首を斬られればお終いだから咄嗟に身を捩ったけれど、危なかった…

再生していく手足を確認し、傷を負って倒れる悲鳴嶼さんと不死川さんを見遣る。


何が起こった？

斬られた…？

間合い的に私達に刃が届く訳が無かったのに？

何で……



「継国！」


「！」


「惚けるな！攻撃を続けろ！」


「っはい！」



土煙の向こうから現れた上弦の壱は、『刀』と呼べるのか微妙な程に奇妙で長く凶悪な武器を持っていた。

武器が大きく変化したから攻撃が届いたのだと納得しつつ、防戦一方になる今の状況に焦りを覚え始める。攻められないという事は打撃を与えられないという事。

この赫く染まった刀での攻撃はどうやら鬼にとって致命傷になるらしい。

せめて一撃

そう思っても、攻撃を掻い潜って近付くなど自 殺行為だ。


飛んでくる斬撃を躱した時、不死川さんが背中をざっくりと切り裂かれたのを見て内臓が浮き上がる心地がする。



「不死川さん！！」



追い討ちを掛ける上弦の壱の攻撃が、当たった…と思った。



「無一郎…！？」



無一郎が、不死川さんを助けた。


死なせない 貴方はまだ両腕で刀を振れる


そう言った。


何でそんな悲しい事を言うの？自分はもう死ぬんだと思っているの？だから捨て身の覚悟で不死川さんを庇ったの？

やめて___



ギリギリと音がする程に歯を噛み締めて、目を見開いた。


整理しろ。今、何処に誰がいる？月の呼吸は技の数が知れないのだから攻撃が何処まで届くかは分からないとして、私は今どう動くべき？何の呼吸を使うべき？

玄弥君がいる。悲鳴嶼さんも不死川さんも無一郎もいる。何処に誰が居るかは分かってる。




_____迷うな




見ろ。見ろ。見ろ。


私には才能がある。ここに居る誰よりも。

誰よりも強い訳じゃない。

だけど、上弦の壱にとって『危険分子』になれる可能性がある。



「……上等…！」



なってやろう。

正真正銘の『化け物』に。『危険分子』に。







出来る







大きく、大きく空気を吸い込んだ。




月の呼吸 弐ノ型 朱華の弄月



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