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79 隣に ページ29

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「ね、ねえ無一郎、こんなに人来るなんて聞いてない…」


「教えるのが無理そうなら見てるだけでも良いから。近くに居て。お願い」



お願い、と訴えるその可愛らしくも必死な表情に負け、じゃあ稽古場には居る事にするからと頷いた。

柱稽古が始まった。

本来なら私も指導者として加わらなくてはならないのだけど、絶対に無理だから稽古場の隅っこで眺めている事に。

出来そうなら教えてやって、と言われたけど多分無理だ。だって初対面の人を目の前にするとガチガチに緊張して動けなくなるし。


人がとにかく多い多い多い…


此方をチラチラと見てくる隊士もいるものだから最初はビクビクしていたけれど、無一郎が余りにも冷たいのでちょっと可哀想になって意図せず緊張が解れていった。

数日すればちゃんと顔を上げて皆の稽古の様子を眺めていられるようになり、休憩の合間にほんの少しお話する事も出来た。







私にしては頑張っている方だと自分を労って、無一郎に手を引かれながら今日も稽古場へ向かう。

稽古場に入るすぐ手前、無一郎は急に立ち止まったと思ったらズイッと顔を寄せて来た。



「A」


「な、なに?」


「ちょっと距離が近すぎじゃない?」


「え?」


「休憩中、他の奴らと話してる時。Aは僕のだから。忘れないでよ?」



不満そうな不安そうな表情を見て思わず呆けると、顎を掬われ唇が重なる。

ゆっくりと離れていく無一郎の顔を見ながら顔が赤くなっていくのを感じ、無一郎の肩口にぽすんと額を預けてか細く返事を返した。



「休憩中にしても稽古の最中に話し掛けたら邪魔かと思って…」


「邪魔な訳ないでしょ……。じゃあ休憩中は僕の隣に居て。悪い虫が近付かないように」


「う、うん」



優しく頭を撫でられて、無一郎の背中にそっと手を回す。

あったかい、と言葉を漏らせばAもだと返され、2人で笑い合ってからゆっくりと体を離した。



「隣に居てね」


「うん」



やはりまだどこか不安を滲ませた表情を弛緩させるように強く手を握りしめ、稽古場の引き戸を開いた。


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瑠璃烏(プロフ) - いちごぱふぇさん» (今更かよって感じですが返信させて頂きます(ー ー;))ありがとうございます!こういうチートキャラ的なの書いてみたかったので作者も楽しかったです。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年7月28日 19時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
いちごぱふぇ(プロフ) - ああもう好きです!!!!好きすぎて好きが止まんないですどうしてくれるんですか! (2020年7月7日 20時) (レス) id: e2dd6d7f46 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ゆりなんぽんさん» ぜひ拝読させて頂きます!改めて、最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年4月20日 22時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - manamimoon0511さん» ありがとうございます!楽しんで頂けたのなら本望です(´∀`*) (2020年4月20日 21時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
manamimoon0511(プロフ) - 凄く面白かったし素晴らしかったです!!ほんっとに有難う御座います!!!! (2020年4月20日 18時) (レス) id: 0aa1fe61f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠璃烏 x他1人 | 作成日時:2020年4月2日 10時

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