74 残酷 ページ24
意味が分からないという様子で力なく首を振る月島くんからパッと手を離す。
いつの間にか乱れていた呼吸を整えて、未だ困惑に揺れる瞳を見つめた。
「でもどんな状況だろうと…あの時言ったことは最低だから。許さなくていい。いつまでも根に持って恨んで構わない。本当に、ごめん」
「っ…」
バッと頭を下げて謝罪の言葉を口にすると、月島くんは驚いた様子が消えないまま数歩下がって、そのまま何処かへ行ってしまった。
ふぅ…と息を吐いてゆっくりと頭を上げる。
後輩に頭を下げるなんて多分一生に何度も無いことだ。きっと短いだろう人生の中では貴重な経験だ。
そう自分に言い聞かせて、俺もその場から踏み出した。
「うおっ」
「！ ……サーセン。聞くつもりは無かったんスけど…」
角を曲がる所でぶつかった飛雄が、気まずそうに顔を逸らす。どう言葉をかけるべきか迷っているのだろう。
居心地の悪い空気を包んで消すように、笑った。
「あははっ、カッコ悪いとこ見せたな」
「いえ……カッコいいっすよ」
どこまでも純粋で迷いのない、時には人を傷つける真っ直ぐな言葉。それが今はありがたかった。
そのツヤサラな髪の毛をゆるりと撫でて、戸惑いの色を浮かべる群青の瞳を見つめ返した。
「…そっか。ありがとう」
「？」
「それより飛雄…ごめん、ちょっと肩貸して…」
「はっ？え、あの、先輩っ！？」
瞬間、飛雄にもたれる。
叫んで酸素が足りないのか頭が痛い。肺が痛い。何か心臓も痛い気がする…
唸りながら、頭痛の波に顔を歪める。
「っう…」
「せ、せん…先輩！っ誰か呼んで来ます！」
「待って大丈夫だから…！」
「いやでもっ…」
飛雄の服を掴んで引き止めながら、少しでも頭の痛みが逃げないだろうかと、思いっきり腕に爪を立てた。
ーーー影山side
目の前にいるA先輩は、血が滲みそうなほど腕に爪を立てて、歯を食いしばっていて。
___怖かった。
先輩の体を支える手が震えた。
こんなに強い覚悟と才能、センスを持った人が、バレーで世界に通用するかもしれない人が、ちょっと叫んだくらいでフラフラになるなんて……
残酷だ。
バレーなんてままならないに決まってる。
俺だったら耐えられない
そう考えると、本当に怖かった。
「はぁ〜っ………ごめん、もう大丈夫」
「は、はい…」
「飛雄…？」
震える手を隠すように、力が抜けた体から手を離した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 264人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠璃烏(プロフ) - justice swordさん» やっとか〜っ！って感じです！欲を言えば家の大きなテレビで見たいんですけどね…(¬_¬)見られるだけ有難いんですけどね。今から待ち遠しいです！ (2020年8月26日 9時) (
レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
justice sword - 瑠璃烏さん» ですよね！いい終わり方だけど、もう少し見たい気持ちもあるんですよ…そう言えば知ってます？10月から第２クールやることを。 (2020年8月25日 20時) (レス) id: ba2c8d8630 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - justice swordさん» ありがとうございます( ；∀；)ハイキュー完結しましたね！綺麗に終わってくれて嬉しい気持ちもありつつ、ずっと読んできた身としては感慨深いです…！ (2020年8月2日 18時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
justice sword - 瑠璃烏さん» それでも大丈夫です！少しずつでも更新してくれることが僕たち読者の嬉しいことですから。 (2020年8月2日 15時) (レス) id: ba2c8d8630 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - アンさん» ありがとうございます！梅雨のせいもあってか体調崩し気味ですが…(*´-`)出来る範囲で頑張って更新していきます！ (2020年7月15日 20時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑠璃烏 x他1人 | 作成日時：2020年2月11日 18時
