73 事件 _過去編_ ページ23
試合に勝って笑顔で駆け寄って来る兄さんを見ると、胸を焦がすようなあの感情たちはサラサラと崩れて消えていった。
『A！体調は大丈夫？試合、どうだった？』
汗を拭うこともしないまま車椅子の正面に膝を付いて手を握ってくれる兄さんに、東京での治療が始まってから初めて、笑顔を見せた。
いや違う。笑顔に"なれた"んだ。
ポカンとした表情で見つめてくる兄さんに、小さく首を傾げて応える。
するとその顔がくしゃりと歪んで、その両目からは涙がポロポロと零れ落ちた。慌てて手をぎゅうっと握り返して、オロオロと視線を彷徨わせた。
途端、まだ汗で湿った腕にきつく抱きしめられる。
あれ…声ってどうやって出すんだっけ……
なんて意味不明な疑問が頭をぐるぐると回る。仕方がないから声の代わりに行動を起こした。
『A〜……っ良かった…良かった…ッ！』
ぎゅっと抱きしめ返して、肩口に顔を埋める。
その行動に兄さんは息を吸い込んで、その空気を吐き出すように泣き笑いした。
誰も兄さんのこんな姿を見た事が無いんだろう。驚きを纏った視線を感じる。
ゆっくりと体を離した兄さんはまた正面から見つめ直して、わしゃわしゃと髪の毛を掻き撫でられる。
もう一度微笑んで見せれば、兄さんは安心したように頷いて他の選手達と一緒に監督の元へ駆けて行った。
ーーー
ボーッと窓の外を眺めて、何か飲みたいという俺のワガママを受け入れ自動販売機へ向かってくれた母を待っていた。
何を考えるでもなくただ外を見ていたら視線を感じて、そちらへ顔を向ける。
そこには、複雑そうな表情で俺を見ている背の高い金髪の男の子と、彼に隠れるように立っているそばかすの男の子。
掠れた声で、何か用かと尋ねてみた。
すると金髪の子の方が震えた声で言葉を音にする。
『…なんで……なんで、選ばれないんだよ』
意味がよく分からず黙り込んでしまう。その沈黙が気まずくなって、彼の言葉を憶測で解釈して言葉を返した。
『……使えない人は選ばれないんじゃない…？』
その言葉を受けてあからさまに衝撃を受けた顔をした彼を見て、「あ…」と思った時にはもう遅く。
慌てて弁明しようとした瞬間に酷い咳の発作に襲われ、泣きそうな声で名前を叫ぶ母が駆け寄って来たのを最後に、発作が治まった時にはもう彼は居なかった。
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瑠璃烏(プロフ) - justice swordさん» やっとか〜っ！って感じです！欲を言えば家の大きなテレビで見たいんですけどね…(¬_¬)見られるだけ有難いんですけどね。今から待ち遠しいです！ (2020年8月26日 9時) (
レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
justice sword - 瑠璃烏さん» ですよね！いい終わり方だけど、もう少し見たい気持ちもあるんですよ…そう言えば知ってます？10月から第２クールやることを。 (2020年8月25日 20時) (レス) id: ba2c8d8630 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - justice swordさん» ありがとうございます( ；∀；)ハイキュー完結しましたね！綺麗に終わってくれて嬉しい気持ちもありつつ、ずっと読んできた身としては感慨深いです…！ (2020年8月2日 18時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
justice sword - 瑠璃烏さん» それでも大丈夫です！少しずつでも更新してくれることが僕たち読者の嬉しいことですから。 (2020年8月2日 15時) (レス) id: ba2c8d8630 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - アンさん» ありがとうございます！梅雨のせいもあってか体調崩し気味ですが…(*´-`)出来る範囲で頑張って更新していきます！ (2020年7月15日 20時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠璃烏 x他1人 | 作成日時：2020年2月11日 18時
