戦え舞え舞え藤の花 (ページ43)

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43 羅生門蔓ページ43

「善逸！ねぇしっかりして！善逸っ…！」

「鬼は…殺した、から……」

「喋らなくていいからジッとしてて！今止血するからっ」

恐怖に手が震えてしまう。

何があったのか、どんな鬼にやられたのか、聞きたい事は沢山あったけど今は全部後回しだ。

震える手で羽織りの袖を引きちぎって、止血帯の代わりにする。

傷口をぎゅっと縛ると善逸は小さく苦痛の声を漏らした。その声を聞いて泣きそうになりながら、桔梗を呼ぶ。

バサバサと飛んで来た桔梗に必死で告げた。

「誰か怪我の手当てをできる人を呼んできて！お願い、急いで！」

ブンブンと首を振って飛び去って行く桔梗を見送り、震える手を善逸の頬に添える。いつの間にか涙が溢れていた。

滴が善逸の額に落ちて、その琥珀の瞳が揺れる。

「…ひどいよ……あれ、言い逃げじゃん…」

「っうん…！ごめんなさいっ、ごめんなさい…！好きなの善逸！死なないで…！」

泣きそうに歪んだ顔をそっと撫でて、お願いお願いと何度も口に出す。

何でこんな事になったのか、それは何も分からないけど…鬼のせいだという事は分かっている。

わらわらと寄って来ている鬼を見て、善逸にそっと話しかけた。

「私が、善逸を守るから…！」

小さく首を縦に振った善逸を見て、涙を拭き立ち上がる。

数がえげつない。しかも何か大きいの一体いる…

私1人で倒せる…？いや、やらなければ。

憎い憎い鬼ども…

また私から、大切な人を奪おうとした。

「お前たちは…っ絶対に許さない！」

そう叫んで、いつものように構える。

何故他の型を使わないか。それは単純明快、私が壱ノ型しか使えないからだ。

羅生門蔓は、平安時代にある武士が切り落としたという鬼の腕に準(なぞら)えた植物の名前。

斬られた鬼に準えた名前の技で倒されるなんて…ここにいる鬼どもはなんと数奇な運命だろう。

肺に空気を送り込む。全身に酸素が行き渡るように。

ゆっくりと、目を閉じた。

『母と姉の意思を継ぎ、強く生きるんだ。絶対に挫けるな』

『お前は私の娘も同然だ。死んではいけない、絶対にだ。約束できるな？』

『全ての鬼を、自分の家族を殺した鬼だと思え』

炎柱様、おじ様、師範……お兄ちゃん

分かってるよ。私がここで諦めたら、善逸も私も死んでしまう。

絶対に死んだりできない。まだ、大切な人と過ごし足りない___

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