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32 提案 ページ32

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最後の全身訓練…鬼ごっこでは、私もカナヲちゃんに勝つ事は一度も出来なかった。


だってまあ私は足速く無いし全集中の呼吸ずっと使うのダルいしカナヲちゃんは胡蝶さまの継子なんだから私なんかに勝てなきゃ逆にカッコ悪いし


なんて勝てない理由をつらつらと頭の中で唱えながら、負ける悔しさを腹の奥底に沈める。

夕焼けを眺めながら、ふぅ…と息を吐いたその時。



「A」


「! 冨岡さんっ」


「元気か」


「はい!胡蝶さまのお薬のお陰で何とか」


「そうか」



それだけ言って冨岡さんは、さっきまで私が縁側に座っていた場所の、すぐ隣へ腰掛ける。

トントンと隣を叩くので、素直にそこへ腰を下ろした。

そのまま何も会話が無いものだから、一体何なんだという意味も込めて視線をおくると、冨岡さんもまた私をじっと見ていた。

私がぱちくりと瞬きしてようやく、冨岡さんはゆっくりとだが口を開いた。



「これは…ただの提案だ。柱と癸とか関係なく、対等な立場として聞いて欲しい。命令じゃなくて提案だ」


「は、はい。何でしょうか?」



先を促すと冨岡さんはまた黙って言い淀み、沈黙が流れる。

そろそろ痺れを切らすぞという所でようやく息を吸い込む音がした。



「俺の……俺の、継子になる気はないか」


「え…?」









ーーー善逸side









きよちゃん、すみちゃん、なほちゃんから金平糖を貰ったから、Aちゃんも一緒に食べようって誘うつもりだった。

そのつもりで探してたんだ俺は。

こんな会話を聞くために探していたんじゃ……



「俺の……俺の、継子になる気はないか」


「え…?」



咄嗟に出そうになった声を飲み込む。

思わずその場を駆け出していた。足音煩かったから、Aちゃんに聞こえちゃってるかな…


それよりどういう事なんだ?

あれは水柱の冨岡義勇…

継子?柱に直接指南を受ける…カナヲちゃんみたいに?どうして…


ああ、でもそうだ…


あの子は違う。普通じゃない。俺と共通点が余りにも多いから、あんまり眩しく隣で笑ってくれるから、完全に忘れてたけど


天才なんだ。


俺とは違う。本来ならもっともっと上に居るべき存在。








「ぜっ、善逸!?どうしたんだ!」


「ぇ……?」



気付けば、部屋に着いていた。

そして、何かが床に落ちる音。パタッ、パタッ…って。


下を見てハッとする。


俺、泣いてる___


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瑠璃烏(プロフ) - 澄葉流さん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年2月27日 11時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
澄葉流(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください! (2020年2月26日 22時) (レス) id: 73c9d55ae5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2020年2月26日 16時

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