戦え舞え舞え藤の花 (ページ12)

今日:2 hit、昨日:8 hit、合計:53,872 hit

12 勝負ページ12

錆兎に負けっぱなしで悔しくて悔しくて、以前は炭治郎ほど鍛錬していなかったけれど最近は一緒にするようになった。

勿論、男子と女子では力の差があるので全く同じ事はしないけれど。

偶に息抜きで１日中裁縫をして着物を縫ったりして、季節は流れていった。

「炭治郎、行こう」

「うん、行こう！」

雪の降る、冷たい冷たい日。

町で時透さまに助けられ、錆兎と真菰と再開してから約半年。

いつもの場所へ行くと、錆兎は真剣を持っていた。

ああ、ついに来たなと思いながら真菰の隣に立ち、2人が向かい合う様を見つめる。

勝負は一瞬だった。

カラン…

と、２つに割れた面がぶつかる乾いた音。

錆兎は笑った。

そしてそれを見た瞬間に真菰が私を抱きしめ、抱きしめ返そうとした手は空を切る。

「え……？真菰…？」

消えてしまった…？

今の一瞬で、2人とも？

ようやく会えたのに…再会できたのに…？

そんな寂しさと虚無感に支配されて棒立ちになっていると、背後からそっと肩を抱かれてもつれるように足が進んだ。

そのまま炭治郎の正面に立って、おじ様は静かに言う。

「お前を最終選別に行かせるつもりはなかった。もう子供が死ぬのを見たくなかった…。お前にあの岩は斬れないと思っていたのだが…」

皺だらけの優しい手が、ぐしゃぐしゃに乱れた炭治郎の髪の毛を撫でる。

「よく頑張った。炭治郎、お前は凄い子だ……」

言い終わったかと思うとおじ様は炭治郎を抱きしめ、炭治郎はボロボロと涙を流した。

私もそっと、炭治郎の頭を撫でる。

「＂最終選別＂必ず生きて戻れ。儂も妹も此処で待っている」

炭治郎は、声を上げて泣いた。

ーーー

昨日縫い終わった藤色の着物を綺麗に畳んで、その上に"厄除の面"を置く。

もう寝るだけとなった所で、私は漸くおじ様に問い掛けた。

「おじ様……私には＂最終選別＂へ行く条件を与えませんでしたね」

「ああ。お前は生きて帰って来ると、儂は分かっているからな」

「ふふっ、買い被り過ぎでは？」

「いいや、真実だ」

至って真剣な声音は、本当に私を信じているらしい事が分かる。

髪を梳かしていた手を止めて、おじ様に向かって姿勢を正した。

「絶対に死なないって約束しましたね」

「ああ」

「絶対に生きて帰ります。信じて待っていて、おじ様」

「……ああ」

正面からぎゅっと抱きしめられ、私もそっと腕を回した。