ちゃんとかわいいよ【川西拓実】 (ページ10)

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1日1度は訪れるこの自販機の前に立つ。

今日も、コーヒーを飲もうとボタンに手を伸ばす。

でも、いつもなら目に入らない、目に入っていない振りをしてきた飲み物。

“ミックスオレ” が目に入る。

これも、優斗と付き合ってから、飲まなくなった。

…今日だけ、久しぶりに飲もうかな。

ﾋﾟｯ、と音を鳴らすと、すぐにソレは落ちてきた。

蓋を開けて、ごくりと1口飲む。

『おいしぃ…』

染み渡るような味だった。

懐かしかった。

私はこれがずっと好きだったから。

今までの不安や苦労が、全て流されていくようにすら感じた。

もう、ここで穏やかに過ごしてたいや。

そう本気で思えるほど、ミックスオレは、私の心を揺らした。

｢いた。Aちゃん、｣

『あ、川西さん…』

思わずペットボトルを背中側に隠す。

それは衝動的なものだった。

見られたら、怒られる。そう本能的に思ったからだ。

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｢お前そういう女々しい飲み物やめろよ｣

『え、だめ、かな。』

｢“そういうの”は、お前みたいなブスが飲むもんじゃねぇし｣

『そう、だね。もうやめる。』

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はぁ。結局思い出しちゃうなぁ。

これをトラウマ、って言うのかもしれない。

｢Aちゃんが、メガネ外してるところ、初めて見たかも。｣

川西さんのその言葉を聞いて、ハッとする。

すっかり忘れていた。

手に持っている物より、隠さなければいけないモノがあったことを。

不快にした。つまらないものを見せた。

『ごめんなさい！』

私はミックスオレを隠すことなんて忘れて、

ペットボトルを握りしめたままの手で、顔を隠した。

｢なんで謝るの？｣

そう言いながら川西さんは私が握っているペットボトルを抜き取った。

もしかして、わざわざ見ようとしてる？

何でって、聞くけど、川西さんもう私の素顔見てるじゃん。

もう、答えなんて分かりきってるじゃん。

『川西さんの、目を汚してしまう、から』

｢どういうこと？ごめん、よく分かんない。｣

…なんで分かんないの。

それとも分かってないふり？

私が、自分の口で、“私は不細工だからです。”とか、言わせようとしてる？

ひどい、そんな人だと、思ってなかったのに…。

そう思ってしまったら、もう、涙なんて抑えられなかった。