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「準備はいいですか?それじゃ行きますよ」
私がピッと一度笛を吹くと、2人の男性はきらりきらりとゆらめく水の中に体をすべりこませた。
ぐんぐんと泳ぎ進めてゆく2人に、私は手にしていたストップウォッチを見て微笑んだ。
「すごい、今日もいい感じ」
岩鳶高校水泳部、今日も元気に活動中です。



部活が終わり、私は今日の4人の記録をつけていた。
「遥先輩は相変わらず調子がよくて、真琴先輩もいい感じ。
やっぱり2人で泳いだら何か違うのかな?」
隣で用具の片付けをしている同級生マネージャーの江に話しかける。
「そうだねー、何か見えない力が働いてたりして!」
「何それ」
「渚くんと怜くんもいい記録出したんだよー。地区大会が楽しみ!」
地区大会まであと2週間ちょっと。このままいくと地区大会は突破できそうだ。
記録をつけ終わった私は、小さくのびをした。
「江がマネージャー誘ってくれてほんと良かったよ。ありがとね」
突然の感謝の言葉に驚いたのか、江は目を丸くした。
「A頭でも打ったの?」
「失礼すぎ。さ、帰ろ」

「そういやA、明日病院だっけ?」
「そうだよ。だから部活行けないけどごめんね」
「気にしなくていいよ。それより大丈夫そうなの?足」
私は視線を落として、長い黒靴下で隠れている自分の右足を見た。


幼い頃から水泳が好きだった私。世界水泳のテレビ中継を見ながら、
「わたしもこのおっきいプールでおよぎたい!」っていつも言っていた。
将来の夢は水泳選手で、ずっとずっとスイミングクラブに通って泳ぎ続けていた。
そのお陰で中学生の時にはこの辺りでは有名な水泳少女だった。

このまま頑張り続けたら、大きなプールで泳げる!

自分の未来に胸をふくらませていたそんな時だった。

突然私の足は動かなくなってしまったのは。

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作者名:さざまみ | 作成日時:2017年8月7日 16時

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