十章 ページ10
「お前、だったんだな」
そうやって三号が指差したのは、二号だった。いつもの子犬の様な、天使の様な可愛い顔を歪ませて、彼は笑っていた。その様子はさながら小悪魔の様だった。
「ど、どう言うことだよ!何かの間違いじゃないか!?」
そんな彼の姿に激しく動揺した一号が声を荒げた。三号をすがる様に見つめていた、しかしその視線を振り払う様に、三号は首を横にふった。
「俺と9、8と4。この四人はお互いの証言以外にも、9が撮っていたビデオに証拠がある。6と7はお互いの証言だけかもしれないが、そもそも外にいる。マネージャー室から一番遠い彼らに犯行は無理だし、さっきからの発言を聞いている限り、自分たちに疑いが向く様なことばかり進んで発言している。共犯者がいたんじゃないか?なんて彼らが犯人なら言わなくていいでしょ?」
そう言って六号に軽く微笑んだ。六号も微笑み返す。
「やっぱりさっきおかしかった5の発言。あれがポイントになってくるんだよ。」
そんな三号の言葉に八号が唾をゴクリと飲み込み、先を促した。
「ど、どんなポイントになってくるんだ?」
すると、そこで割り込んできたのは四号だった。
「俺たちを見かけたのは2だったんだね?」
そう言って三号の顔を覗き込む。コクリ、と三号はうなずいた。
「廊下を歩いていて5の叫び声を聞いたんでしょ?二人に会ったのは5じゃなくて2だった。」
「あ!そうだ、俺たち廊下を通る2を見かけてゲームに誘ったんだけど、結局通り過ぎちゃったんだよね。」
三号の言葉に八号が記憶を思い出していく。
「俺の推理はこうだよ。」
ぐるりと全員を見回した三号はコホン、と咳払いをして徐に口を開いた。
「まず彼らは俺らのおまんじゅうを盗んだ。みんなが予想以上に大騒ぎするから、焦った彼らはマネージャーに罪を着せることにした。自分たちを第一発見者に仕立てた後、自然にみんなを呼び寄せ集めたかった。そこでまず1を呼んだんだ。」
そう言って一号の方へちらりと視線を向けた。
「1が自分に甘いことを知っていた2は、彼がメンバーを探しにいく、と言えば必ず自分が名乗り出てくれることを分っていた。より自然な流れにするために5がすれ違ったって言うシナリオにしたんじゃないかな?そうしてまんまと呼び集められた俺たちは、今こうしてお互いを疑い合ってたってわけさ。」
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作者名:田中 | 作成日時:2020年5月8日 21時