田中 (ページ9)

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九章ページ9

まくし立てる三号の言葉に皆んなが圧倒されていた。
「確かに、俺たち５には会ってないな。」
そんな四号と八号の言葉を始まりに、段々五号に疑いの目が寄せられる。目が泳ぎ何の反論もせずに押し黙る五号を庇ったのは一号だった。
「ちょっと待って、確かに５が言ってることはおかしいかもしれない。でも彼がそんな嘘をつくメリットって何？４と８とすれ違っていようがすれ違っていまいが、どちらにせよ、おまんじゅうが盗まれたこととは関係がないよ。」
そんな一号を五号が潤んだ目で見つめる。
「こうとも考えられるよ」
そう言って次に話を切り出したのは七号だった。
「嘘をついているのは4号と8号の方。ずっと控え室にいた、なんてのは嘘だった。シャワー室へ向かう５号とすれ違って、このままでは隠し持っていたおまんじゅうが見つかる、と何らかの危機感を抱く様な出来事が起こった。。とっさにマネージャー室に寄って慌ててそこらへんに置いてあった鞄に突っ込んだ。」
「えええええええ何でそうなるんだよ！俺らそんなことしてねえよ」
「ほ、ホントだ俺たちそんなことしてないよ」
今度は二人に疑いの目が向けられる。慌てる二人を庇ったのは九号だった。
「俺、３の動画撮る前はこの二人の動画撮ってたんだよ。少なくともその時から控え室にいたし、二人にそんな器用な真似はできないよ。少なくとも８はそんなことをしておいて、ここまで自然にしらをキリ通すなんて無理だよ」
「なんか庇ってくれてる気しないんだけど…」
ちょっと不満そうだったが八号も少し落ち着きを取り戻していた。
「大体危機感を抱く様な出来事って何だよ」
「それは分かんないよ、俺その場にいないし」
そうやって飄々と七号が話を交わす。結局また、話が振り出しに戻ってしまった。

「じゃあ五号じゃなかったら誰が犯人なの？」
そうやって時間が無情にも流れた時
「一人じゃないんじゃない？」
そうやってまた新しい考えを生み出すのは六号だった。
「何だって？」
そうやって聞き返すのもまた七号だ。
「だから、共犯者がいたんじゃない？そうしたらアリバイなんて簡単に作れるんじゃない？」
「お前めっちゃ頭いいじゃん！」
八号がそうやって絶賛した。すると、深刻そうな顔で三号が言葉を漏らす。
「共犯？それでアリバイが作れるのは一人しかいないよ…」
三号は濡れた漆黒の瞳を悲しそうにその人に向けていた。そんな彼の視線を受け止めると、諦めた様に微笑んだ彼の姿を見て三号は確信した。