八章 ページ8
「話を聞いている限りじゃ、皆んな誰かと一緒にいて、アリバイがちゃんとある様に見えるよね？」
そうやって切り出したのはしっかり者の九号だった。
「２と５は共に第一発見者で、一緒にマネージャー室にいた。４と８は控え室で喋ってて、６と７は外で日向ぼっこでしょ？３と俺はメインテナンス室にい…」
「待って！てことはや、１は！？ずっと一人だったじゃん、犯人はお前だ！」
九号の話を遮って名探偵の様に一号に指を突き立てたのは八号だった。
「お前、おまんじゅうぐらい俺が買ってやるじゃん」
そうやって慈悲の眼差しを向ける八号だったが、そんな視線をじろりと厳しい目線で見返した一号が八号の頭を叩いた。
「俺じゃねえ！」
「うん１じゃない」
そうやって呆れながら九号は八号に優しく説いてあげた。
「いいか？１は俺らの控え室、外、メインテナン室全部回って声をかけて、俺らをマネージャー室に集めた。俺らがどこにいるかも分からない中、割と早く集合できたのは、１が走り回って俺たちを探してくれたからだ。時間的に考えて、１にもアリバイがあると言っていいだろう。」
「そ、そうか…ごめん…」
すっかりしおらしく謝る八号を見てため息をつきながら一号もやれやれ、と肩を撫で下ろす。
「じゃあ一体誰が犯人なんだよ〜」
むくれてしまった八号に続いて厳しい目をした三号が口を開いた。
「ねえ、俺、今の話でおかしいと思うことがあるんだよね。」
そう言って彼は館内の図を、その辺に置いてあった広告の裏に書き始めた。長方形を横向きに置いて、左にメインテナンス室、手前にここより外、と記入した。更に二枚目を取り出し、右側にシャワー室、真ん中にマネージャー室、左端に控え室、と書き込んだ。どうやら一枚目に一階部分を、二枚目に二階部分を書き記したらしい。
「５はさ、シャワー室を出て、マネージャー室に直行したんだよね？」
「う、うん」
妙に厳しい声の三号にたじろぎつつも、五号は返事をする。
「５が４と８とすれ違ったから１が探しに行くことになったって言ってたけど、二人は控え室にいたんでしょ？マネージャー室より遠い控え室にいる二人とどうやってすれ違うことができたの？控え室に行く前に二人が廊下を歩いてたのかな？でもおかしいよね。１が呼びに行くまで、彼らは事件のことを知らなかった。２には聞こえた叫び声が、聞こえてなかったんだ。だから二人は廊下にいたはずがないんだよ。」
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作者名：田中 | 作成日時：2020年5月8日 21時
