田中 (ページ4)

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四章ページ4

一様は途端にざわつき始めた。
「確かに、俺らの鞄もあいつの鞄も黒のボストンバックだし間違えてもおかしくない…かも？」
「こないだ俺も間違えかけたんだよね！」
そんな声を追い風に、二号は更に畳み掛けた。
「おまんじゅうを持って帰るのを忘れない様に、わざわざ僕たちの鞄に入れてくれただけだとしたら？」
場の空気が少し変わりはじめたのを皆が感じていた。
「俺やっぱ無罪派！」
と無邪気に声をあげたのは八号だった。
「うん、やっぱけー、じゃない４の言うとおり疑うのはよくないな」
などと言って四号の肩に腕を回す。少し嬉しそうに、困った様に微笑む四号を見て慌てて一号が言った。
「待ってよ、じゃあ仮に俺たちの鞄だと思ったとしてもだよ？俺たちの鞄を勝手に開けようとしたって言うの？俺達誰も鞄開けてもいい？なんて許可出してないでしょ？もし勝手に開けたとしたら、それはそれで」
「それはそれで何？」
またそんな彼を手厳しく遮ったのは二号だった。
「勝手に開けてること自体が罪って言うの？僕たちだってあの人の鞄勝手に開けたじゃん。だからおまんじゅうを発見したんでしょ。」
そうやって二号は一号の強い目力にも負けず、一蹴した。
「それともこの中にあの人の鞄を開けること、許可とった人いるの？多分いないだろうね。だってもし許可取ってたら、僕たちがおまんじゅうを見つける前に、あの人はおまんじゅうをどこか別の場所に移してただろうから。」
そう淡々と述べた二号の意見に皆んなが納得しかけていた。

「ちょっと待ってよ」
そうやって流れを覆したのは七号だった。彼のアイデンティティである垂れ下がった瞳を精一杯吊り上げ、二号を睨みつけている。
「まさかお前がこんな失態を犯すなんて失望したよ…」
そうやってちょっと芝居がかった声で話始めたと思うと今日一番と言っていいほど真剣な声で皆んなに語りかけた。