田中 (ページ2)

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二章ページ2

「え～それでは、今度こそ話し合いを始めたいと思います。」
そうやって九号がすらりと長い足を組みなおした。どうやら彼が仕切ることは決定している様だった。確かに、仕切るのに向いてそうなしっかりとした面持ちだったが、さっきから鉛筆を転がしたり、消しゴムを落としたり、なんともお転婆な姿が見受けられる。
「ではまず、被告が有罪か無罪か、自分の思う方に挙手してください」
と話し合いが始まろうとした時、
「待って、被告って何？」
とまたもや議論を遮る者がいた。今にも決壊しそうな涙袋を添えた目で、そうやって不思議そうに問いかける八号の様子を見て、えーそっから？と他の男達が爆笑しながらブーイングをする。
「俺らが今から話し合うマネージャーのことだよ。罪を犯したとして起訴された人のことを被告人、または被告っていうんだけど。ああ、被告人と被告っていうのは全く意味が違ってね、この場合被疑者っていう方が適切かもしれないけど…」
そうやって懇切丁寧に八号に説明し始めると、止まらなくなる九号。三号が何故か、二人の様子をとても嬉しそうに眺めていると
「多分ね８号にはね９割ぐらい話伝わってないよ」と言って、笑いながら七号がストップをかけた。何とも彼の独特な笑い声が響いていた。

そうこうしているとなかなか議論が始まらない。
「もう、はやく始めるよ！」
そうやって痺れを切らした一号が声を上げる。
「有罪だと思うひと！」
一斉に手が多数上がった。ぱっと見、全員が有罪に賛成している様に見えた。
「あれ？全員有罪？」
「何だよ、話し合うまでもなかったな」
そうやって盛り上がった時一号が気付いて四号を見た。七人全員が挙手をする中、ただ一人手を挙げなかったのは、四号だった。
「お前だけ手あげて無いじゃん」
「うん…ごめん、俺無罪…かも」
そうやってがっしりとした筋肉質な身体からは、想像もできないような弱々しい声で、本日初めて四号は意見を述べたのであった。
「えー！どう考えても有罪でしょ！だってあの人のカバンの中から俺たちのおまんじゅうが出てきたの、みんなも見たんでしょ？あんなの現行犯だよ現行犯！」
と、女の子のように白くて華奢な身体を起こして七号が反論する。
「まあまあ一応四の意見も聞いてみよう」
そうやって五号が諫めると、彼が言うなら仕方がないと言う風に席に座り直した。そんな七号の姿を申し訳なさそうに横目で見ながら、四号はポツリポツリと話し始めた。